「社員同士を競わせる企業」の末路

過去、ボーナスなどを巡る組織内対立、従業員心理の不安定化により、事業継続に行き詰まった企業は多い。よく知られているのが、倒産した米“エンロン”だ。

エンロンは、エネルギートレーディング部門で収益性の高かった従業員に、巨額ボーナスを支払った。その一方、評価の低い15~20%の従業員を定期的に解雇することで知られていた。

高い賞与を手に入れるため、自分の利益を最優先する従業員は増えた。いつ解雇されるか不安に駆られる社員も増えたに違いない。自分のステータス(高い賞与や雇用)を守ろうとする社員は増え、粉飾決算の一因になったといわれている。組織内の対立は事業運営の効率性、持続性にマイナスである。

ポイントは、従業員の賛同を得て、持続的かつ長期の視点で成長戦略を実行することだ。それは、経営者の責務である。市場環境の変化などによって一時的に、特定の事業が急成長することはある。AI一極集中で株価が上昇したサムスン電子などはまさにそうだ。

ただ、未来永劫、AI向けのメモリーチップが伸び、右肩上がりが続くことは想定しづらい。1990年代半ばから2000年9月まで膨張した、米ITバブルでは“ドット・コム”企業の高成長はほぼ永久に続くとの楽観が広がった。しかし、実際には、そうはならなかった。

公正な人事評価制度を欠いたサムスン電子

組織を一つにまとめ集中力を引き上げる。市況、経済環境に対応しつつ、既存分野から成長期待の高い分野にヒト、モノ、カネを配分する。より効率的に付加価値を創出する。これが経営者の役割だ。

そのために、公正な人事評価制度を整備し、不満が出づらい給与や報酬の体系を整備することは欠かせない。サムスン電子の経営陣は、そうした取り組みを進めることが難しかったようだ。

現在、わが国では労働市場の流動性が高まっている。若年層からシニア層まで、より高い給与を支払う企業に転職する人は増えた。キオクシアのように、AI半導体需要の増加で業績が拡大した企業も多い。

そうした中だからこそ、経営者は多様な利害を調整し、より公正に従業員を評価する制度の確立に取り組むことが求められる。それは、組織全体の士気向上に寄与し、持続的な成長、そして長期存続を目指す必要条件と考えられる。

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