️「1ミリのコーティング」開発に7年かかった
クリスピーサンドはまったく新しいコンセプトの商品だったために、開発には苦労が多かったと平野さんは語る。
「クリスピーサンドを開発するうえで、最大の難関が『水分』でした。アイスクリームには水分が多く含まれますから、単にウエハースにアイスクリームを挟んだだけでは、水分が浸み出してサクサク感が失われます。そこで考案されたのがチョコレートやキャラメルによる厚さ“1mmのコーティング”でした」
ウエハース、コーティング、アイスクリーム。三つの素材を最適な量と構造で組み合わせ、理想の食感を再現する。プロジェクトでは試行錯誤が続き、試作が重ねられた。また、コーティングの技術にも工夫が凝らされた。
アイスクリームをコーティング(チョコレートコーティングやキャラメルコーティング)で包んで、ウエハースに挟めば、タコスのような食感を残したまま、三位一体の美味しさを味わえます。この味と食感にたどり着くまでに、7年かかりました」
水分を逃さないためには、アイスクリームを一定以上の密度と厚さでコーティングしなくてはならない。しかし、層が厚すぎるとコーティングの甘さが際立ってしまい、味の調和が乱れる。1ミリの単位で調整が続けられたコーティングの技術開発は、まさに「日本人の職人技」だといえる。
発売当初は乾燥剤が入っていた
そのこだわりを象徴するエピソードがある。クリスピーサンドは当初、パッケージ内に乾燥剤が封入されて販売されていた。当時の技術では、コーティングによる密閉が十分には及ばず、発売時にはパッケージ内に乾燥剤を封入して水分を取り除く案が採用された。
しかし、それから25年を経た現在、クリスピーサンドのパッケージを開封すると、その中に乾燥剤はない。開発チームは発売後も地道に改良を重ね、ついに乾燥剤の封入を不要にしたのだった。
その技術の詳細について尋ねると、平野さんは「それは企業秘密でして」と口を濁す。長年にわたって密かに技術を磨き上げ、唯一無二の製法を築き上げる姿勢には、日本的な職人精神が浮かび上がる。
もちろん、こだわりは製法だけではない。それと同様に心血を注いでいるのがフレーバーの開発だ。
クリスピーサンドの第1号商品は2001年に発売された「キャラメル」。ミニカップで既に販売していたバニラなどのフレーバーでは、ウエハースと相性が合わず、消費者調査でも十分な評価が得られなかった。ウエハースやコーティングとマッチするフレーバーは何か。暗中模索の末に出した答えが、濃厚さとほろ苦さの同居するキャラメルのフレーバーだった。
