「重要な質問に返答する直前」がポイント

(時事通信フォト=写真)

少々難しい言い方になるが、人間の特定の心理状態と関連している非言語的なシグナルのことをNVC(Non Verbal Communication)と呼ぶ。NVCにはさまざまなものがあるが、レオナルド・ダ・ヴィンチの最高傑作「モナ・リザ」はそのほとんどを見事に網羅している。

まず、モナ・リザの体の向きに注目してみると、胴体は向かって左側を向いており、頭部(顔)は正面を向いている。一方、目に注目してみると、向かって右側を向いている。つまり、モナ・リザはひとりの人間でありながら、同時に三方向を向いていることになる。

つまりモナ・リザが描かれたアトリエには、ダ・ヴィンチを含めて3人以上の男性がいた可能性が示唆されるのである。モナ・リザは、同時に三方を向くことで3人のいずれとも心理的な「結びつき」を保っているのだ。

また、左側の口角をわずかに上げた微笑は相手への好意を示し、体の正面で組まれた両手は若き女性の芳醇な胸のふくらみを強調しているようだ。

私は、モナ・リザはダ・ヴィンチの自画像であると推理している。実際、ダ・ヴィンチの自画像を反転させてモナ・リザに重ねると、口角の一部を除いてピタリと重なり合うのだ。男色家だったダ・ヴィンチはサライに想いを寄せていたが、若いサライにふさわしいのは老いた自分ではなく、モナ・リザのように若く美しい女性である。サライへの想いと老醜からくる嫉妬心をひとりの女性の肖像画に同時に託したのが、名画「モナ・リザ」なのではないか。

ともあれ「モナ・リザ」は人と人を結びつける表情・しぐさ=NVCのチャネルを余すところなく表現しているという意味でも、名画中の名画であると言っていいだろう。そして、「目は口ほどに物を言い」と言う通り、NVCの中でも目の動きは特に重要なものである。