️「売り上げゼロ」で見出した復活策
「2024年に当社はバスを運転する職種を『ハイウェイパイロット』に名称変更しました。決して『運転手』や『乗務員』ではありません。職種名だけではなく、仕事の目的やミッション、業務内容も一新しました」
目的地に向けて高速道路を滑走し、乗客を快適な旅に誘う飛行機のパイロットのような存在。それがハイウェイパイロットだと平山社長は言う。そのため、運転を業務として担うだけではなく、洗練された立ち振る舞いや高いサービスレベル、高度な職業倫理を兼ね備えていなければいけない。
事実、ハイウェイパイロットは、半期ごとの人事考課において運転技術と同等の配点で接客技術や勤務態度が評価されている。人事考課の結果は給与と連動するため、ハイウェイパイロットは日々、接客接遇や勤務態度の改善に研鑽を積んでいるという。
ところで、なぜハイウェイパイロットという新たな職種を設けるに至ったのか。その裏にはコロナ禍の苦い経験があった。コロナ禍における外出自粛要請に伴い、WILLER EXPRESSは月間売上がゼロに落ち込むなどの経営の危機を味わった。
ポストコロナに向けて、平山社長が起死回生の秘策として打ち出したのが「徹底したサービスレベルの向上」だった。競合他社がひしめき、ハード面では差別化の難しい夜行バス・高速バスの事業において、乗客に選ばれるためにはソフト面を強化するしかない。そのためには、乗客と日々接する従業員の教育や研修を根本から見直し、選りすぐりの精鋭を養成する必要があった。
「当社のハイウェイパイロットは他社の経験者ではなかなか務まらないんです。これまでには求められなかったスキルやマインドが求められるわけですから。だから、当社の仕事や理念を一から学んでくれる新卒学生を積極的に採用しているんです」
️「年収600万」は“社員との約束”
「新卒入社1年目で年収600万円」という高待遇も、単に募集をかけるための広告塔ではなく、ハイウェイパイロットに要求される高度な技能への対価だと平山社長は胸を張る。
実は600万円という金額にも思い入れがある。コロナ禍の経営危機の最中、WILLER EXPRESSからは当時の従業員の4分の1にあたる約150名が会社を去っていった。バスの運行本数が制限され、従来通りの額の給与を支払えないことが響いた。次々と従業員が会社を後にするなかで、平山社長にはある熱い思いが去来していた。
「コロナ禍を耐え抜いてくれた従業員たちにはお礼をしなければいけないと思いました。従来の100%の給与を支払えないなかでも、サービス向上のために心血を注いでくれた従業員が少なくなかった。実際に、コロナ禍以前に比べて、接客や接遇が目に見えて改善していたんです。だから、コロナ5類移行から数カ月経った2023年10月に従業員の前で宣言しました。『年収を100万円上げる』と」

