「2年連続で過去最高益」を達成

当時のハイウェイパイロットの年収は約500万円。そこから約3年間をかけて段階的に年収を100万円引き上げると従業員たちと約束を交わしたのだ。

「年収を100万円引き上げる」と約束したときのことを語る平山社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
「年収を100万円引き上げる」と約束したときのことを語る平山社長

その約束は確かに果たされた。賃上げの原資は「成長」だった。

接客や接遇を向上させる戦略は功を奏し、リピート顧客が右肩上がりに増加。夜行バスの乗車率はコロナ禍以前に比べて8%以上伸び、WILLER EXPRESSは2024年度、2025年度と2年連続で過去最高益を達成する。ハイウェイパイロットたちの地道な努力は、組織の成長を後押しし、100万円にも及ぶ大幅な賃上げを可能にした。

️“自衛隊出身者”が新入社員の指導にあたる

こうした成功体験を経て、平山社長はある確信を得たという。それは「待遇改善と人材育成はセットであるべき」という考えだ。手厚いサポートがあるからこそ、人間は高度なスキルを身に付け、高い職業倫理を養うことができる。高待遇と妥協なき指導は両立されなければいけない。

その思想のもと2024年5月に設置したのが、ハイウェイパイロット育成施設「WILLER LABO」だ。WILLER LABOは、未経験者が3カ月間の住み込みでハイウェイパイロットのスキルを習得する専門施設。入校生は、給与を受け取りながらバスの運転技術を習得できるほか、住居費や大型二種免許取得の全額補助も受けられる。

しかし、平山社長は、それらの利点よりも「現在まで退校者が出ていない」ことのほうが重要だと強調する。

「さまざまな支援や補助は提供していますが、ハイウェイパイロットのスキルはそう容易には習得できません。訓練は厳格ですし、入校中は同期との集団生活です。それにもかかわらず、直近に卒業した8期生まで1名も脱落者が出ていない。ポイントは教官です。実は当社には元陸上自衛隊出身の従業員が在籍していて、彼を中心に教官部隊を編成しました。自衛隊時代には何百人の部下を指揮していた方なので、厳しさと優しさを兼ね備えた指導ができる。そうした環境だからこそ、未経験者でも途中で投げ出すことなくプログラムを貫徹できるんです」

「待遇と育成の両立」は、その他の領域でも一貫している。代表例が、賞金100万円を賭けて全国のハイウェイパイロットが競い合う「トップガンコンテスト」だ。トップガンコンテストは、ハイウェイパイロットのサービス応対や運転技術を競う社内コンテスト。各営業所で予選を実施し、ファイナルステージに進出した代表者のなかから、今年度最高のハイウェイパイロットの称号である「トップガン」を選出する。

2025年度のトップガンコンテストの様子
写真提供=WILLER EXPRESS
2025年度のトップガンコンテストの様子。優勝者には100万円が贈られる。左が平山社長、右が2025年度優勝者の山本巧やまもと さとし(48)さん

「漫才のM-1グランプリを観ていて思い付いたんです。賞金を目がけてたくさんのプレイヤーが切磋琢磨し、技や知識を競い合うようなコンテストがやりたいと。当初、賞金は5万円ほどが妥当かと考えていたのですが、それでは皆が本気になれない。それで思い切って賞金を100万円に決めましたが、正しい選択でした。参加者のモチベーションが高く、熱気がすごい。やはり本気で取り組むからこそ、技術も知識も身に付くのだなあと改めて実感しました」