子供がいない夫婦のケース

これとは違い、本格的にもめ事になりやすいのが、子どものいない夫婦です。

子どものいない夫婦の場合、法定相続人は配偶者と故人の親(両親ともに他界していれば兄弟姉妹)になります。

法定相続分は、

・親が相続人の場合 妻2/3、親1/3
・兄弟姉妹が相続人の場合 妻3/4、兄弟姉妹1/4

です。

夫の死後、義父母や義理のきょうだいと夫の遺産を分ける話し合いをする……想像しただけでゾッとしませんか?

Dさん(59歳)のケース
Dさん夫婦は、子どものいない共働き夫婦でした。
自宅マンション(時価8000万円)の名義は夫8割・Dさん2割。夫名義の預貯金は約3500万円、Dさん名義は約800万円。

Dさんの口座を生活費口座にして、夫の口座を預金口座としていました。ふたりで貯めたお金はふたりのものという認識でいたそうです。

その夫が突然のくも膜下出血で亡くなりました。遺言書はなく、相続人はDさんと夫の両親です。葬儀のあと、義父母から「私たちにも相続分があるんだから、きちんと話し合いましょう」と言われました。

総額9900万円(夫のマンションの持ち分6400万円+預貯金約3500万円)の遺産のうち、Dさんの法定相続分は6600万円、両親は3300万円。Dさんがマンションの持分(6400万円)を相続すれば、預貯金のほとんどを両親に渡すことになります。

「夫の口座には、私が稼いだ分もたくさん入っているのに……」

でも、夫名義で預貯金を積み上げてきた以上、どうすることもできません。

恐ろしいですよね。でも、これは実話です。実際は、不動産の時価をめぐって弁護士を入れて長期間争いました。子どものいない夫婦の相続は本当に大変です。

では、どうすればよかったのか

【対応策】遺言書を書く

もし、「すべての財産を妻に相続させる」という遺言書があれば、両親が請求できる金額は遺留分の約1650万円に抑えることができました。だいたい、そういった遺言書があれば、親御さんも「相続権がある」などと言い出さなかったかもしれません。

遺留分とは、相続人に最低限認められる相続分のこと。この場合の親の遺留分は、法定相続分の2分の1。兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺言書はどんな家庭にも必要ですが、子どものいない夫婦には必須アイテムです。

未成年の子がいる方にも、遺言書は必須です。

この年代だと「まだ遺言書なんて……」と他人事に感じるかもしれません。でも、遺言書がないまま亡くなると、非常に面倒な手続きが発生します。

未成年の子どもは法律行為ができないため、遺産の分け方を決めるためには「特別代理人」を家庭裁判所で選任しなければなりません。

ちなみに母親が代理人になることはできません。なぜなら、母親自身も相続人で、子どもと遺産を取り合う相手となるからです。

特別代理人を選ぶには、家庭裁判所に書類を提出し、「なぜこの人にお願いするのか」という理由書を書く必要があります。しかも特別代理人は子どもの権利を守る立場なので、基本的には法定相続分通りの分け方になりやすく、柔軟な話し合いが難しくなります。遺言書があれば、こうした面倒な手続き自体が不要になります。