博士号取得者数の低さが際立つ日本
文部科学省の有識者会議(2025年9月30日)において「博士課程入学者が過去20年で14%減少し、とくに人文社会科学系では約4割減」という衝撃的なデータが示された(※2)。
日本では少子化による大学進学者数の減少が続いているが、博士課程における減少幅はこれを大きく上回り、若手研究者の供給基盤が揺らいでいる。
日本の博士号取得者数の低さは、国際比較を見ても際立つ。文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)による科学技術指標2025、学位取得者の国際比較によると、人口100万人当たりの博士号取得者数は、日本は2022年度で123人だ。
ところが、韓国(23年度)、イギリス(22年度)では約350人だ。アメリカ(20年度)は約280人だ。
また、2010年度と最新年を比較すると、多くの国で増加しているが、日本とフランス、ドイツでは減少している。
日本における博士号取得者の供給がこのように少ないことは、大学・研究機関のみならず、企業の研究開発や行政の専門職にも直接的な影響を与える。そして、日本が科学技術立国としての基盤を失うことを意味する。
*2 朝日新聞「博士課程入学者、20年で14%減 就職への不安影響か」2025年10月4日
進学意欲に冷水を浴びせる“生活の不安”
博士課程入学者が減少している最大の理由は、「博士号を取得しても職がない」という深刻な問題だ。
SNS等では、「博士課程人生終了」「博士卒は就職氷河期」「博士課程へ来てはいけない! すぐ戻れ!」といった表現が飛び交っており、若者の博士課程進学意欲に冷水を浴びせている。
博士課程での苦労は、研究面のものというよりは、金銭面での苦労であり、進路が決まらない不安という生活上の問題なのだ。
欧米では、博士課程修了者には、企業の研究職やコンサルティング、行政分野など多様な就職先がある。それに対して日本では、依然として大学・公的研究機関への就職に偏っている。
しかも、ポストが不足しているため、構造的ミスマッチが解消されないまま残ってしまう。基礎研究・先端研究を担う博士人材への需要が構造的に少なく、待遇も改善しないため、若い世代が博士課程を避けることが合理的な選択になってしまっている。
この背景には、1990年代以降の大学教員ポストの削減、国立大学運営費交付金の減少、企業の研究投資の頭打ちなどが重なっている。


