「XG・HANA」と「美容整形・痩身目的で薬」…相反する流行
さて、ここからが本題です。この現象の奥には、若者たちのどんな心理があるのでしょうか。僕が面白いと思うのは、「これもまた、この時代だから流行ったんだな」という点です。いま若者の世界では、本当に矛盾したものが両方流行っています。
一方には、「ルッキズム(外見至上主義)はよくない」という流れがあります。いまの若者はそういう教育を受けて育ってきましたし、実際、XGやHANAのような、これまでの画一的な美の基準にとらわれない、ありのままの自分を肯定するスターが支持を集めています。
ところがもう一方で、SNSやリアルの生活では真逆のことが起きています。美容整形は珍しいものではなくなり、痩身目的で薬に頼る動きまで話題になりました。いわば「アンチルッキズム」と「超ルッキズム」が同時に流行っている。Z世代は、その二つの間で激しく揺れ動いているのです。
ただ、どちらの道も、実は行き止まりなのです。
XGやHANAには、圧倒的な歌やダンスの実力、人間的な力があります。見た目だけ真似しても、同じ存在にはなれません。かといって、過剰なルッキズムの方を目指すと、その領域には上には上がいる。結局「芸能人強いよね」「整形している子強いよね」という話になってしまう。どこにも行き場がなくなっているのです。
「行き場をなくしたZ世代」が見つけた身近な手本
そんな中で、ちょうど程よい着地点として見つかったのが、東南アジアのファッションやインフルエンサーだったのではないか――僕はそう見ています。
そもそも韓流も中華も、突き詰めればすごく「美を追求する」カルチャーです。東南アジアトレンドは、そのアンチテーゼというか、もう少し身近なものとして受け入れられている。背伸びしすぎず、自分を否定しすぎず。届く範囲の憧れ。それが、東南アジアトレンドの正体だと思います。
このトレンドは、まだ来始めて半年ほどです。広がりとしては、感度の高い層が取り入れ始めた段階で、マジョリティにはなっていません。担い手は、わざわざベトナムやタイまで買いに行く方たちも含めて、女子大生や、すごく若いOLさんが中心です。
ただ、思い返せば韓流も、最初は一部の感度の高い人たちから始まりました。大人の世代には、正直、見分けはつかないと思います。でも、それは韓流ファッションだって同じで、説明されて初めてわかるものです。「タイトでミニスカートが多いのが韓国系」だとするなら、「ダボっとしていて、フリルがついて可愛くて、でも露出は控えめ」なのが東南アジア系。そういうファッションが、実はいま、少しずつ街に増え始めているのです。
韓国・中国という“真似しきれない憧れ”の間で行き場をなくしていたZ世代が、より身近な手本を見つけた。この変化は、これからの若者向けビジネスや消費トレンドを考えるうえで、見逃せない兆しだと僕は思っています。


