“普通”になってほしいと必死だった

ステップ②その信念・価値観をゆるめ、本当の願いに戻る

Mさんは、そこで初めて気づきました。

「私はずっと、人の目を気にして生きてきたんだ」
「その不安を、この子にも向けてしまっていたんだ」

まずは、そのことを責めずに受け止めました。

「ずっと、“普通にしなきゃ”って頑張ってきたんだね」
「本当は、たくさん褒めてもらいたかったよね」
「ありのままの自分でいたかったよね」

そんなふうに自分に声をかけることから始めました。そして問いかけました。

「本当に、“普通”であることが幸せなのだろうか?」
「人間は多様性があるからいいのではないか」
「普通って何? 普通であることのほうが不自然なのではないか?」

すると、その奥にあった本当の願いが見えてきました。それは、

「この子に、そのままの自分を愛せる人になってほしい」
「安心して、自分を出せるようになってほしい」

という願いでした。

「周りの目」という恐れから“普通”になってほしいと必死だった。でも本当は、「この子がこの子らしく、安心して生きられること」それを願っていたのです。

胸に手を当てる女性
写真=iStock.com/hidez
※写真はイメージです

「落ち着きなさい」から「今、どんな気持ち?」へ

ステップ③本音ベースで伝え直す

ある日、お子さんが、嬉しそうに大きな声で話しながら、元気いっぱいに動き回っていました。

以前なら、すぐに「落ち着きなさい!」と言っていた場面です。

でもその日、Mさんは深呼吸をしてこう声をかけました。

「今日はすごく楽しいことがあったんだね」
「それくらい嬉しかったんだね」

お子さんは少し驚いた顔をして、「うん!」と答えました。そしてMさんは続けました。

「お母さんね、今まで『落ち着きなさい』ってたくさん言ってきたよね」
「でも、本当は、元気いっぱいなところも、思ったことを素直に言えるところも、あなたの素敵なところだと思っているんだ」
「そのままのあなたらしさを大切にしながら、人との関わり方も一緒に考えていけたら嬉しいな」

すると、お子さんは、少し照れたように笑ったそうです。

その日を境に、すべてが急に変わったわけではありません。

それでも、Mさんの言葉は少しずつ変わっていきました。

潮田学『「あなたのため」をやめましょう 親のエゴを手放せば子どもは動き出す』(KADOKAWA)
潮田学『「あなたのため」をやめましょう 親のエゴを手放せば子どもは動き出す』(KADOKAWA)

「落ち着きなさい」ではなく、「今、どんな気持ち?」「どうしたらみんなも気持ちよく過ごせるかな?」「何かお母さんに手伝えることはある?」

そんな対話が増えていきました。

そして、親子で笑って話せる時間も、少しずつ増えていったのです。

Mさんは言いました。

「子どもを受け入れられるようになったというより、私自身が人の目を気にして『普通でなければいけない』と思い込んで生きてきた自分を、少しずつ許せるようになったんです」

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