おかしな兄妹
現在63歳の増井さんは、実家に住み込みで88歳の母親の介護をしている。
「母が2度目の動脈乖離で緊急入院したとき、問題の兄が、『実家に住んでもよい』と言いました。正しくは、『戻ってきて母の世話をしてほしい』だと思うのですがね……」
母親は要介護2。一日中ソファに座ったまま生活しており、3食そのソファで食べている。
朝晩はトイレ介助、毎食後に入歯介助(外す・洗う・保管・装着)が必要で、移動は歩行器。紙パンツを使用しているが、週に1回ほどシーツや衣類に漏らすことがある。
「母は、緩やかに悪くなっています。いつまた動脈瘤破裂が起こってもおかしくない状況だと言われました。その事だけでも心が苦しいのに、兄の態度は本当に精神を蝕みます。気にしないようにしていても塞ぎ込む日々です」
実家の隣に住んでいる65歳の兄は、相変わらず増井さんを無視し、時には聞こえるようにわざと嫌味を言う。認知症が進んでいる母親は、増井さんをかばうどころか、時には兄と一緒になって嫌味を並べることもある。
「母は昔から異様なほどに兄びいきの人ですが、優しい母の時もありました。私は、母の介護を投げ出すことはできません。自分がどうしたいのかを十分考えて、やるべきことを後悔のないようにしようと決めました。外野のハエがうるさいですが、私は絶対に負けません。自分がやるべきことをして去ります。母が亡くなってこの家を出たら、私は二度とここには来ないつもりです」
筆者は、介護は介護される側ではなく、介護する側が納得いくようにすればよいと考える。なぜなら、介護する側の人生は、介護される側が亡くなった後も続いていくからだ。
介護に全時間・全労力を投げ打つのではなく、自分の時間や家族の時間も大切にしながら、ぜひ悔いのない介護をやり遂げてほしい。



