「ブタブタ」と悪態をつく兄
中部地方在住の増井さんは、アパレル系の会社で働く父親と、専業主婦の母親の間に長女として誕生。3歳上に兄、6歳下に弟がいた。
「もともと父は毛織物工場で働いていたのですが、オイルショックでリストラに遭い、職を転々としはじめました。私が中学生の頃くらいには、『家は貧乏だな』ということを家族全員が共有していました」
幼い頃はきょうだいの仲は悪くなかったが、増井さんが高校生になるかならないかの頃に、兄から「ブタブタ」と悪態をつかれたり、露骨に避けられたりするようになる。
「兄は、高校が合わなかったようで、孤立していたみたいです。母は、そんな兄に気を遣っていました。弟と兄は9歳違うのであまり接点がなく、弟は私に懐いていました。今も、母の病状など何かあれば話すのは弟と私だけです」
一度兄に「なぜ避けるのか?」と訊ねたことがあるが、「何となく」と言ってはぐらかされたという。
「父と私は思春期くらいの頃から会話がなくなり、20歳くらいの頃には言わなくてもいい軽口ばかりきいてくるため嫌うようになりました。父は私だけでなく、誰に対しても相手をバカにしたようなことしか言わないため、兄とはよく取っ組み合いの喧嘩になっていました。それでも、(地元にある)モンキーパーク、御在所山(鈴鹿山脈の主峰)、大阪万博などに家族で行ったのは楽しかった思い出です。母は器用で、私に洋服をたくさん作ってくれました」
高校を卒業すると兄は大学に、増井さんは服飾系の専門学校に進学。その後、専門学校を卒業した増井さんはアパレル系の会社に技術職として入社。兄は大卒後、薬の商社に勤め、32歳で結婚。弟は大卒後に関東の会社に就職し、実家を出て29歳で結婚した。
増井さんは28歳になると、4歳上の会社員の男性と結婚し、実家を出てからしばらく仕事や子育てに忙しくしていたが、夫とのいい関係は長続きせず、30歳の時に2歳の娘を連れて離婚することに。実家に出戻って暮らすことは許されなかったこともあり、離婚した年に早々に再婚を決めた。相手は住宅設備の会社に勤める34歳だった。
実家から車で2時間半ほどの田舎で暮らしはじめ、1年後に女児に恵まれた。

