資源に恵まれた国を苦しめる「呪い」
もし、あなたの家の庭から突然石油が湧き出したら、どうしますか? おそらく、あなたは汗水流して働くのをやめるでしょう。勉強してスキルを磨くこともしなくなるかもしれません。ただ庭から湧き出る黒い液体を売るだけで、一生遊んで暮らせるからです。
これは個人だけでなく、国家にも当てはまります。経済地理学には「資源の呪い」という有名なパラドックスがあります。石油や天然ガス、ダイヤモンドといった天然資源に恵まれた国ほど、経済成長が鈍化し、政治が腐敗し、内戦が起きやすく、国民が貧困に苦しむ傾向があるという現象です。
サウジアラビア、イラン、ロシア、ベネズエラ、ナイジェリア……豊富な資源を持つ国々の中で、日本や欧米のような「安定した民主主義と、高度な産業基盤」を築けている国は、驚くほど少ないことに気づくはずです(ノルウェーなどの例外はありますが)。
なぜ、神様からの贈り物であるはずの資源が、呪いとなってしまうのでしょうか? その理由は、「掘れば儲かる」という産業構造の安易さが、国家の足腰(製造業や人材)を弱らせてしまうからです。
資源に依存し、「稼ぐ力」が育たない
資源国が陥る最初の罠は、経済的なものです。資源輸出によって巨額の外貨(ドル)が流入すると、その国の通貨の価値は急上昇します。するとどうなるか。自国の製品が割高になり、輸出ができなくなります。同時に、海外から安い製品が入ってくるため、国内の製造業や農業が壊滅的な打撃を受けます。
これを経済学用語で「オランダ病」と呼びます(かつて天然ガスを発見したオランダで起きた現象です)。資源以外の産業が育たず、すべての輸入代金を資源の売上だけで賄うようになる。いわば「資源一本足打法」の国になってしまうのです。
この状態で資源価格が暴落すれば、国は一瞬で破綻します。ロシアやベネズエラが定期的に経済危機に陥るのは、資源に依存しすぎて、他の「稼ぐ力」を失ってしまった地理的副作用なのです。
