ソフトパワーで問われる日本の岐路

サウジアラビアで起きているのは、単なる中国資本の流入ではない。かつてサウジアラビアの自動車市場はトヨタや日産が席巻し、お茶の間では日本のアニメが彩った。日本製品やコンテンツの良さが神話のように語られてきたサウジアラビアで、自動車、アニメコンテンツといった日本の強みが、次々と中国発のビジネスに置き換えられている。

それだけではない。デリバリーやアパレルといった、これまで日本が必ずしも強みを持たなかった生活分野でも、中国企業が低価格と利便性を武器に急速にシェアを広げ、日常の隅々にまで中国の存在感が浸透しつつある。

しかも、中国語教育という形で、次世代の人材育成にまで布石が打たれつつある。一過性の商品流入ではない。サウジアラビア国民の対中認識をも変えていく構造的かつ長期的な浸透だ。

2026年5月の米中首脳会談を経て、米中の間には一定の融和ムードも漂い始めている。世界が米中の「G2」の構図に傾いていくならば、経済力、技術力、軍事力だけでなく、文化やエンターテインメントといったソフトパワーもイメージを作り上げていく重要な大国間競争の要因となる。

2026年5月14日、中国・北京の人民大会堂にて、中国共産党総書記兼国家主席である習近平氏との歓迎式典に臨むトランプ米大統領
2026年5月14日、中国・北京の人民大会堂にて、中国共産党総書記兼国家主席である習近平氏との歓迎式典に臨むトランプ米大統領(写真=The White House/Daniel Torok/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

中東地域で中国の影響力が国民レベルで強まっている中、日本は自国の強みをどう活かしていけるのか。将来を賭けた岐路に立たされている。

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