ドラマや映画で描かれる公安の世界はこれ
ところで、ひと口に「公安」といっても、実はその役割ごとにいくつかの組織に分かれている。
ここで、それらの全体像をざっくりと述べてみよう。
【国家公安委員会】
国務大臣を委員長とし、その他五名の委員からなる行政委員会のこと。警察庁を管理する内閣府の外局。
【都道府県公安委員会】
各都道府県知事の所轄のもと、都道府県警察の管理を自治事務として行なう組織。みなさんが持っている運転免許証に印字されているのは、この組織だ。
【公安警察】
本書が扱うテーマであり、警察の一部門。普通の警察が「刑事警察」であるのに対し、公安警察は「警備警察」という部門に属している。
【公安調査庁】
法務省の外局として、破壊活動防止法(破防法)や団体規制法などに基づき情報の収集と分析を行なう組織。
オウム真理教への観察処分の実施や、国内諸団体、諸外国、国際テロ組織などを対象とする情報機関。
【公安審査委員会】
公安調査庁と同じ法務省の外局。各法令の規定により、公安調査庁からの処分請求を受けて、各種の処分を審査・決定する行政委員会。
この中で一般的にいわゆる「公安」と認識され、映画やドラマ、小説などの舞台としてたびたび登場するのは「公安警察」と「公安調査庁」ということになる。
2つの中で本書では「公安警察」をおもなテーマとしている。みなさんは「あの映画やドラマで描かれる公安の世界ってどうなってるんだろう?」という目線で読み進めてほしい。
内実は地味な世界
普段、公安警察がどんなことをしているかというと……。
「監視」と「情報収集」、この2つに要約される。
実際に行なわれているものを挙げると、次のようなものになる。
・対象の動きを把握するため、ひたすら定点から対象を監視する
・アジトや活動拠点を炙り出すため、尾行する
・協力者(ドラマなどで言うところの情報屋)と接触し、情報を収集する
・収集した情報の精度を高めるため裏取りを行ない、真偽を見極める
・常に新たな協力者を発掘、開拓するため、さまざまな人物にアタリをつける
・対象周辺における「ヒト・モノ・カネ」の動きを徹底的に調査する
こうして列挙すると、一見華やかなスパイ映画のような仕事に感じられるかもしれない。
しかし、それは思い込みで、内実は「辛抱・我慢・忍耐」の三語がふさわしい地味な世界だ。
たとえば「定点監視」などの場合は、監視対象のわずかな変化を見極める必要があるため、何カ月、あるいは何年もかけて監視し、「この日だけは建物への人の出入りが少し多い」などという微細な動きをチェックする必要がある。
そのため、心身ともに健康な状態でないと遂行できない仕事であるともいえる。

