居酒屋で隣り合った人との“連絡先交換”に注意
また、居酒屋なども注意が必要だと警鐘を鳴らす。
「あとは、若者が集まる大手の居酒屋チェーン店に女性と一緒に行って、わざと男性2人組に話しかけたこともありました。『うるさくしてほんますみません』と謝って、『どうですか? この子。彼氏募集中です』とか話しかけたり。女性がいると相手の警戒のハードルが一気に下がり、和みやすいのです。『お兄さんたち絶対普通の仕事していませんよね』なども尋ねてみる。たいがい賑わっていますから、『ちょっと席近づけていいですか』なんて言いながら、連絡先を交換する。
そうやって連絡先を集めたら、次の日以降、何度かやり取りをする。
そして、後日、実際にボクが面識のある飲食店に誘います。そのとき、店員に手土産渡して『いつもありがとうね』と距離が近いことをアピールします。おもむろにスマホを取り出して『あぁよかった、店のHPから俺の名前消えてるわぁ』と示す。相手が『どうしたんですか』と聞かれれば『いや実はここ、オーナーやねんけど、名前なんて載ってても意味ないやんか。国税こわいし』と言う。意味がわからなくても『なんか金を持ってそうだな』と思わせたのです」
どれも日常の延長であることが怖い。金持ちには素朴な善意の青年を演じ、夢見る若者には成功者としての振る舞いを見せる。そのいずれにおいても、“獲物”として狙いやすい属性は存在するようだ。
「不機嫌そうな人」「田舎から出てきた人」は危ない
「もっとも重要なことは、相手が“陽キャ”ではないことでした。たとえばどれほど成功している事業者でも、水商売に大金を落とす層は、投資にほぼ関心がありません。それに毎晩飲み歩いているような明るい性格の人たちは、必然的に交遊録ができてきますから、早い段階で詐欺にも気づかれてしまいます。したがって、詐欺師からすれば、こうした人々を騙すメリットは大きくありません。
一方で、どちらかというと偏屈で、人が寄り付かない、不機嫌そうに見える人に話しかけるのが定石でした。若者も基本的には同じです。田舎から出てきて、ネットワークのない人に近づいて『俺も最初そうだったわぁ、友達少ないねん』と共通項があると思わせていたのです」
インタビューの冒頭から筆者には気になっていたことがあった。A氏の言葉にときどき交ざる関西弁だ。指摘すると、A氏は「知る限り、ほとんどの詐欺師が関西弁を使用しています」と明かした。
「おっしゃるように、ボクは九州地方の出身で、もともと関西弁を話していませんでした。もちろん、関西地方で真っ当な商売をしていたのは事実です。でもそれ以上に、関西弁が便利だからボクは使っていました。
最初は、飲食店を経営していた時期に知り合った関西圏の人々に親近感を覚えてもらうために使い始めました。もともと九州訛りがひどく、『マイペース』というイメージを持たれることが多かったんです。翻って標準語は関西からすると『なに都会人ぶってんねん』と嫌われる傾向にあります。余談ですが、関西生まれではないのに関西弁を話す詐欺師はたくさん知っています。これも注意が必要かもしれません」

