「投資」「クレカ」で相手を騙した

取材当日、A氏は時間ぴったりにやってきた。「本日はお時間をとっていただき、ありがとうございます」。無地のシャツに特徴のないパンツ、特に若々しいわけでもなければ老けているともいえない顔貌――人の外見に物を申すのもおこがましいが、A氏は極めてありきたりな男性に思えた。

話を聞くうち、A氏がこれまで行ってきた詐欺には2つのパターンがあることを理解した。

1つは、主に事業をやっている人間から金を集めて、投資を代行するもの。ただし「契約書を書いて、あくまでボクが金を借りるという立て付けにせんと、金融業法違反に抵触するんでそのへんは慎重にやりました」と法の抜け穴を突く周到さを見せる。

もう1つは、筆者の友人が被害に遭ったパターンだ。何らかの接点を持った人間に、「クレジットカードを切ってくれんか」と頼む。応じた人間がA氏のためにカードで使用した金額以上を翌月に振り込み、信頼を得る。その後、徐々に返済が遅れてやがて返さなくなる。

お金
写真=iStock.com/shirosuna-m
※写真はイメージです

経営の失敗が“詐欺師転落”のきっかけに

A氏がいわゆる投資詐欺を始めたのは、2020年頃、自身が31歳のときだという。九州地方で生まれたA氏は、関西の学校を卒業し、会社に就職した。だが駆け出しの社会人の給料など、たかが知れている。ちょうど、友人のすすめで買った日本の個別株が当たった。会社の給料以上に稼げることに「感動した」。

その後、株の利益などを元手に、A氏は何店舗も展開する老舗飲食店を買収し、会社は退職した。経営者の仲間が増えるにつれ、A氏の株式運用の手腕が噂になった。

「最初の1年間くらいは、真面目に他人のお金を預かって運用していました。それなりに成果も出していたと思いますよ。ただ、本業である飲食店の経営がうまくいかへんくて……『預かっている金を運転資金にしたほうが早い』と気づいたんです」

当然、最初のうちは黙っていた債権者たちのなかにも、A氏に預けた金を案ずる者が出てくる。「完全にバックレることはしないで、なるべく数万円でも返済するようにはしていました。その債権者から、新たな対象者を紹介してもらえることがあるからです」。だがその生活は長く続かず、A氏は知り合いの少ない地域を転々とすることになっていった。