“セルフレジ”の高齢者に近づき、店の配慮の無さに共感
筆者がもっとも気になったのは、A氏が“カモ”を物色する際の基準だ。どのような場所で、どのような属性の人間を狙うのか。それがわかれば、友人が言う通り啓発になろう。A氏は「年代によっても違ってくる」としたうえで、ある程度の類型を示した。
「一般にお金持ちが多く住んでいる地域のスーパーマーケットは、詐欺師にとっては好都合な場所でした。近づいたのは、特に不服そうにしているお年寄りです。商品を探したいけど、店員に気づいてもらえない……みたいな状況を不満に思っていたりするわけです。そこに付けこむのです。
『おばあちゃん、大丈夫か? この店、ほんっと、不親切よなぁ。俺が店員呼んできたろか?』と。その場はそれで終わる。でも、会計のときにセルフレジがありますよね。お年寄りは必ずそこでまごまごしています。操作方法がわからない苛立ちにくわえ、店員が気づかないという配慮のなさにまた少しイラッとする。そこにボクが登場する。『また会ったやん、セルフレジって俺も嫌いやねん』とか言いながら、やってあげる。そして『俺の家もこっちのほうやねん』とか言って、買い物袋持ってあげたりする」
その後、すぐに詐欺を仕掛けず、余裕をあえて見せるのも詐欺師の手口だ。
「わざと言うんです。『おばあちゃん、このへん俺みたいな詐欺師が狙ってるかもしれんから気を付けてや』とか」
思えば、A氏は関西で投資詐欺をやっていた時代も「いやいや自分で投資したらええやん、俺なんか持ち逃げするかもしれへんのに」と相手に話すことで逆に信頼を得ていたらしい。いったん退いて、相手に自ら選択させる狡猾な手法だ。
ティッシュ配り、スマホの修理待ちに現れる
A氏は「家をみれば、だいたいどれくらいの資産があるか想像がつきます」と断言する。親切にして信頼を得られた高齢者の自宅を査定する際の、A氏の目は冷静で鋭い。
「西日本なら芦屋、東日本なら田園調布とか成城学園などの、いわゆる高級住宅街にある、こぢんまりした戸建ては狙いやすいと思っていました。あまり大きすぎる家は、自宅にお金をかけすぎていて現金を保有していない可能性が高い、お手伝いさんなどの複数の監視の目があって付け入る隙がないという理由です。こぢんまりした戸建てほど、すぐに現金にありつく、と考えていました」
一方で、大物を狙わない場合もある。物色するA氏はまさに神出鬼没。たとえばこんな近づき方もあるのだと明かした。
「先ほどのは資産家クラスへの取り入り方でしたが、比較的若い層を狙うときは、権威性をちらっと見せるのです。仲良くなる端緒は何でもいいんです。ティッシュ配りのティッシュを貰った人を追いかけていって、『実はその(ティッシュ広告に描かれている)店のオーナーなんですけど……』とか。
有名メーカーのスマホの修理待ちで、偶然隣り合った若者に『すみません、これの操作わかります? ボク全然機械のことわからへんくて』とか言って近づくこともあります。お互いの田舎の話などを交えながら、『境遇が似てる』と思わせたら連絡先を交換するんです」


