会社は「払う人」を選び始めた

この事実が意味することは何か。

会社は人に払わなくなったのではない。“払う人”を選び始めたのである。

小出翔『誰もが成長し活躍する会社のしくみ』(プレジデント社)
小出翔『誰もが成長し活躍する会社のしくみ』(プレジデント社)

「総人件費の枠は守りつつ、AIの力を最大限に引き出し、事業を牽引できる一握りの人材には出し惜しみをしない」。これが、建前を剥ぎ取ったいまの企業の本音なのだ。

「そんなの、ひとごとだよ」「そもそも、俺より先にリストラすべき奴がいる」。もしあなたがそう高をくくって油断しているなら、今すぐ認識を改めたほうがいい。

企業が本当に見ているのは、単なる年齢ではなく「現在の報酬」と「AI時代における職務内容」のシビアなミスマッチだ。

かつての功績にあぐらをかき、いまの高い報酬に見合うだけの新しい職務価値を生み出せていない人は、格好のターゲットだ。年齢や役職にかかわらず、あなたはすでに“静かな選別”の対象リストに載っているかもしれないのだ。

AIが奪う、若手の「雑用しながら育つ」機会

ここまでの話を聞いて、「自分はまだ20代だから関係ない」と思っている若手がいれば、それも大きな勘違いだ。AI時代は、若手の育成機会そのものを根底から変えてしまう。

これまで、若手社員はリサーチ、議事録の作成、下調べ、初期データの分析といった、いわゆる「雑用」をこなしながら、仕事の基礎や業界の知識を身につけてきた。先輩から「これ、明日の会議までに調べといて」「提案書のたたき台を作っておいて」と頼まれることが、格好のOJT(職場内訓練)になっていたのだ。

しかし、これらの作業こそ、最もAIに代替され、圧縮されやすい領域である。先輩社員が自分でAIを叩けば、数分で終わってしまう。その結果、若手は「雑用しながら育つ」という貴重な機会を失いつつある。

企業側から見ても、大量に人を採用し、長い時間をかけて雑用をさせながら育てる余裕はなくなっている。

これからの若手に求められるのは、単なる手作業の処理スピードではない。AIを使って初期の仮説を早期に立ち上げ、それを基に先輩や上司と対話し、より早く「意思決定」に近い仕事へ踏み込んでいく力である。