拡販対象に指定されるためには、土台となる利益率の好条件に加えて、「キャッシュバック」「販売協力金」とも呼ばれる“リベート”や納入金額の減額、販売員(メーカーヘルパー)派遣などの要求を提示されることも多い。こういったリベートは、リベートだけでなく値引きの原資や店員のインセンティブの資金源となる上に、ヘルパーがいれば店員を削減できるため、人件費も少なくて済む。

平成中期ごろに、関西を中心に家電量販店との取引の矢面に立っていたメーカー関係者によると、特にヤマダ・エディオンは「商談時のコミット(売上台数・売上額など)を本当に販売してくれる」(業界用語で「やり上げてくれる」)が故に、協力せざるを得ない。

筆者撮影
初夏はエアコン販売のキャンペーンが繰り広げられる。(ヨドバシカメラの撮影可能な場所にて)

なかには、今は存在しない量販店からは「会長が誕生日だから、奨励金を出せ」「映像機器一式を会長宅にタダで届けて」などという理不尽な要求もあったそうだが、万が一にも逆らうと「そんな会社の商品はねぇ、売場の遥か隅に左遷するまで。文句ある?」(担当者に、本当に言われたらしい)と言われるという……メーカーが逆らう選択肢など、あろうはずがない。

家電量販店と国内メーカーの関係が「一蓮托生」であるが故の「リベート+ヘルパー頼みビジネス」が、家電量販店の成長の源となった構図は、お判りいただけるだろうか?

家電はもう儲からない

ところが、国内家電メーカーが近年すっかり勢いをなくし、もはやリベート・ヘルパー派遣をお願いできる状況にない。

特に、オリンピック・サッカーW杯などの特需を支えてきた大画面テレビ・レコーダーなどの“黒物家電”は競争のあげくに、低価格・低利益の“レッドオーシャン”市場と化した。メーカーも東芝が「テレビ部門撤退・中国企業(ハイセンス)に譲渡」、パナソニック・シャープ以外の各社が「ブルーレイレコーダー撤退」、パイオニア・日本ビクター(現:JVCケンウッド)のように「大幅縮小・撤退」など、民間向け事業そのものから手を引くケースが相次いでいる。

平日のテレビ売場は至って静か(ヨドバシカメラの撮影可能な場所にて)
筆者撮影
平日のテレビ売場は至って静か(ヨドバシカメラの撮影可能な場所にて)

家電量販店が得意としてきた「安心・安全・高機能の国内メーカー製品」そのものが売り場になければ、リベートやヘルパー派遣などを店側から要求できない。メーカーも、週末のフェアのたびに「実弾(リベート)投入、一丸となって販売応援!」といった総力戦を打つことができなくなった。そもそも、過度なリベートやヘルパー派遣要求は何度もコンプライアンス上の問題を起こしており、古い商習慣から脱出する必要があるのは確かだろう。

こういった事情で、リベートやヘルパーに頼らず高利益を稼ぐ体質を再構築しなくてはならない。両社とも利益率が3%以下に低迷している今だからこそ、ヤマダ・エディオンは統合によって、あらゆる部分での再編を必要としているのだ。

20年前から続く地殻変動

もっとも、こういった「家電量販店の再編」に向けた動きは20年、30年前から始まっており、もう数十年も地殻変動が起き続けている。本筋から外れるが、備忘録として記しておきたい。

ヤマダ電機は、いわゆる「北関東YKK」(ヤマダ・コジマ・ケーズ)の競争を勝ち抜き、関西で100店舗以上を展開していた大手「和光デンキ」と組んだ「和光ヤマダ電機」を、2001年に一挙に10店も出店した。大半の店舗が1年しか持たず、「ヤマダの関西進出は失敗」とまで邪推する人もいたものだ。

ヤマダ電機の店舗
筆者撮影
ヤマダ電機の店舗