「立ち直る力」は学んで身につけられる
研究の世界では、レジリエンスは「ストレスや困難からすばやく立ち直り、いつもの自分に戻る力」と説明されています(Sorkkilaら,2019)(*1)。大事なのは、これは一部の特別な人だけが持つ才能ではない、ということ。同じ研究は、レジリエンスは時間をかけて変化する=学んで育てられる力でもあると指摘しています。
実際、レジリエンスの高いアスリートほど、プレッシャーを乗り越え、勝負どころで思い切った挑戦ができることが分かっています(Akoğluら,2024)(*2)。日本代表が強豪相手に2度も前に出続けられたのは、まさにこの力の表れだと言えます。
では、点を取られた瞬間、私たちの体の中では何が起きているのでしょうか。
ここで役立つのが、ポージェス博士が提唱したポリヴェーガル理論です。むずかしい名前ですが、私はいつも「心の信号機」にたとえて説明しています。
・青信号(落ち着いて前向き)……まわりが見えて、判断ができて、力を出せる状態。
・黄信号(焦り・興奮)……ドキドキして、体に力が入る状態。プレーが速くなりすぎたりミスが増えたり。
・赤信号(凍りつき・あきらめ)……頭が真っ白、体が固まる、「もうムリ」と感じる状態。
失点やミスの直後は、多くの人がいきなり赤信号や黄信号に飛び込みます。スポーツの不安は「ネガティブな考え(頭の不安)」と「筋肉のこわばりなどの体の反応(体の不安)」の両方として表れることが分かっています(Schwebelら,2016)(*3)。つまり、心だけでなく体もガチガチに固まるのです。
強い選手とは、赤信号に飲み込まれない選手ではありません。赤信号に落ちても、すばやく青信号へ戻せる選手のことなのです。
「気合」で心を切り替えることは難しい
「気合で切り替えろ!」――よく聞く言葉ですが、実はこれだけでは、なかなかうまくいきません。
理由は、赤信号や黄信号の状態が、自分の意思では直接コントロールしにくい自律神経という仕組みで起きているからです。自律神経には、体をアクセル全開にする「交感神経」と、ブレーキをかけて落ち着かせる「副交感神経」があります。不安が強いときは、アクセル側(交感神経)が強くなり、ブレーキ側(副交感神経)が弱くなっていることが分かっています(Leviら,2022)(*4)。
「落ち着け」と心に言い聞かせても、アクセルが踏まれっぱなしの体は、すぐには止まりません。

