性的虐待疑惑でブランドが失墜
この『マイケル・ジャクソン:ザ・バーディクト』にも一部出てくるが、マイケル逮捕の引き金となったのが、ドキュメンタリー番組『マイケル・ジャクソンの真実』(ジュリー・ショー監督、2003年)だった。
この番組は、遊園地や動物園まであるマイケルの邸宅「ネバーランド・ランチ」を紹介しているが、マイケルはその際ガン治療を支援した12歳の少年と固く手をつなぎ、同じベッドで寝ていると話したのだ。「ベッドを共有するのは最高の愛情表現だ」という一方で「ベッドは性的なものではない。寝るだけだ」ともマイケルは語ったが、一般的に受け入れられる考えではない。しかし裁判では陪審員たちは、被害を訴える少年と家族の証言を信用せず、マイケルにかけられた容疑は全て無罪という評決を出した。
にもかかわらず、マイケルはブランド力をすっかり喪失。熱狂的なファンがいても変わらなかった。ところが、それがマイケルの死で再び逆転。「悲劇的な最期で聖人化され、市場でまたもや価値ある存在となった」とビネリは書いている。
死去すると、世間が手のひら返し
ブランカらは、マイケルが亡くなる直前に予定していたロンドン公演のリハーサル映像をつなぎ合わせて作ったコンサート映画『マイケル・ジャクソンTHIS IS IT』(ケニー・オルテガ監督、2009年)を急遽公開。結果は大成功で、その後もシルク・ドゥ・ソレイユやソニーなどとの契約が相次ぎ、遺産管理団体は死後1年で10億ドルを稼いだという。税務裁判判決文によると、生前のマイケルには4億5000万ドルの負債があった。
以後、マイケルの遺産管理団体の方針は、マイケルの児童性虐待疑惑を否定し、ブランド力を高めることにある、とビネリは指摘する。ビネリが入手したという『Michael/マイケル』の元々の脚本では、マイケルに性加害をされたと1993年に最初に告発した少年の件を取り上げる予定だった。しかし、マイケルは無罪だと主張し、少年一家の信用を毀損する内容が入っていたため、一家とマイケルの和解条件に違反していたことが後になって判明。このため製作側はその部分を削除した上で追加撮影をすることになり、公開が大幅に遅れてしまったという。
少年時代にマイケルに性加害を受けたと男性2人が訴える『ネバーランドにさよならを』に対しても、遺産管理団体は制作したHBOに対し、かつて結んだ誹謗中傷禁止条項違反だと訴訟を起こし、HBOが2024年に配信リストから外したという経緯がある。現在日本のネットフリックスではこの映画を見ることができるが、アメリカからはVPNを経由しない限り視聴できない。

