プーチンを停戦に傾かせる4つの理由

プーチン氏自身は公の場では徹底抗戦の構えを崩していないが、本音では早期停戦を志向している形跡がある。

それは第一に、ドローン戦の不利など戦況悪化や国民の厭戦気分を察知したためだろう。ロシアの国営世論調査機関である全ロシア世論調査センターによれば、80%台を維持してきた大統領の支持率は、4月中旬の調査で65%まで低下した。

第二に、9月の下院選を意識しているかもしれない。最大野党・共産党のマルハエフ下院議員はブログで、「現在の状況が続けば、社会不安や混乱が拡大し、社会的爆発を招く」と警告し、現政権を厳しく非難した。開戦後初となる下院選では、反戦世論が台頭しかねない。

第三に、イラン戦争が終結すれば、原油価格は再び下落し、ロシアのエネルギー収入が減少して経戦能力が低下する。

第四に、イラン戦争後はウクライナ戦争に再び世界の注目が集まり、欧州が調達する米国製兵器が湾岸からウクライナに向けられそうだ。欧州連合(EU)は4月、ウクライナへの900億ユーロ(約17兆円)の巨額融資を承認した。

ロシアの新提案が事実なら、プーチン政権は戦争長期化がロシアに不利と判断したかもしれない。プーチン氏は6月14日、G7(主要7カ国)首脳会議に臨むトランプ米大統領と電話協議を行い、停戦仲介を改めて求めていた。

憲法が定める「領土割譲禁止」の高い壁

占領地を恒久的にロシア領にして停戦するとの提案が仮に提示されても、戦況で優位に立ち始めたウクライナは拒否するだろう。ゼレンスキー政権は2024年に発表した「平和の公式」で、停戦条件として、①クリミアを含む全領土の返還②安全の保証③戦争犯罪追及とロシアの損害賠償――などを要求しており、これが公式の立場だ。

とはいえ、ロシアが占領地を返還するはずもなく、この主張は現実的ではない。早期停戦を望むウクライナは現在の前線で戦闘を凍結し、交渉に入るようロシアに提案している。6月7日にロンドンで開かれた英仏独ウクライナ4国の首脳会談も、「現在の前線で即時停戦し、交渉の起点にする」との立場を支持した。

ただし、これは正式な領土割譲ではなく、一時的な前線凍結による暫定的な境界線を意図する。ウクライナはプーチン大統領の退陣後、外交交渉によって失地を回復したい意向だ。ウクライナ憲法は領土割譲を禁じており、占領地をロシア領と認めるなら、ゼレンスキー大統領は政権維持が困難になろう。

6月16日(現地時間)、G7エビアン・サミットに出席したゼレンスキー大統領(前列左端)
6月16日(現地時間)、G7エビアン・サミットに出席したゼレンスキー大統領(前列左端) 出典=首相官邸ホームページ

ウクライナはまた、ロシアの再侵攻を防ぐため、欧米諸国による「強力な安全の保証」を停戦条件としている。

新提案が伝えられた翌日の15日、ロシア軍はウクライナの首都キーウに大規模空爆を行い、世界遺産の修道院まで攻撃した。ウクライナに譲歩を強いるために攻撃を強化するのはロシアの常とう手段だが、ウクライナ側は18日、モスクワの製油所などに過去最大規模のドローン攻撃で応酬した。戦闘の泥沼化で、停戦までには多くの困難や曲折が予想される。

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