建物寿命を縮めてしまう
内断熱の問題は、室内の寒さや結露にとどまりません。より長期的な視点で見ると、「建物そのものの寿命」にも影響を与えます。
鉄筋コンクリートは、温度変化によって膨張と収縮を繰り返す素材です。外断熱では、断熱層がコンクリートを包み込んでいるため、外気温の急激な変化から守られます。躯体は比較的安定した温度帯に保たれ、熱による伸縮も抑えられます。
一方、内断熱では、コンクリートが直接外気にさらされます。冬は外気で冷やされ、夏は日射と高温外気で加熱されます。この温度変化が日々繰り返されることで、コンクリートに微細なひび割れが発生しやすくなります。
さらに、このひび割れは、水分の侵入経路になります。水分が入り込み鉄筋が腐食すれば、鉄筋は膨張します。それによりコンクリートは膨張破壊を起こします。中性化(コンクリートのアルカリ性が失われる劣化現象)の進行も早まりやすくなります。
もちろん、内断熱であれば直ちに深刻な劣化が起きる、というわけではありません。しかし、外断熱と比較した場合、躯体保護の観点では明らかに不利な構造といえます。
欧州で外断熱が標準化された背景には、省エネだけでなく「躯体を守り長寿命化を図る」という思想があります。特にドイツや北欧では、建物を80年・100年単位で使う前提で設計が行われており、躯体を外気から守ることは「資産保全」として位置づけられています。
なぜ外断熱が「標準」にならないのか
外断熱は、技術的に難しい工法ではありません。日本国内にも実践例はあります。では、なぜ標準化しないのでしょうか。
大きく3つあります。
・建築基準での規定がない
・作る側にインセンティブが働かないコスト構造
・消費者のニーズがない
順番に見ていきましょう。
まず一つは、建築基準や省エネ基準が「工法」ではなく「性能値」で規定されていることです。
一定のUA値(外皮平均熱貫流率)を満たせばよい。一応設計上はヒートブリッジへの考慮が必要ですが、欧州ほど厳しい基準にはなっていません。躯体保護の水準も、厳密に評価されるわけではありません。そのため、内断熱でも法的には何も問題がありません。
法制度が工法を誘導しない限り、市場は目先の売りやすさから、どうしても短期コストに傾きます。
欧州の多くの国々では、外断熱が事実上標準化されているのとは対照的です。特に寒冷地では、内断熱のままでは省エネ基準を満たしにくい設計思想が採用されており、法制度が工法を事実上規定しているのです。
日本では、法制度が工法に対して中立を保つ形で設計されてきました。しかしその「中立」が、結果として内断熱を維持し続ける方向に働いています。
岡田さんは言います。
「日本の住宅の性能が低いのは、技術がないからではありません。どこまでを最低基準とするかを、社会として選んできた結果です」

