出生率を支えていた「家」がしがらみに

東北日本型家族は、同族の結びつきが強い点が特徴である。家長が強い権限を持ち、相続においては長子の単独相続のかたちをとる。それに対して、西南日本型家族は各家の独立性が高く、相続においては末子相続や分割相続の形態をとることも多い。

もちろん日本の家族類型すべてをこの二分法で捉えることはできないが、傾向として東西にそうした違いがあるのは間違いない。

東北日本型家族においては、親の介護など家に関わる仕事は長男が担うべきとする規範が強い。長男が家を継ぎ、次男三男が出稼ぎに行くという農村のあり方は、東北において典型的に見られる。高度成長期までは、こうしたあり方が出生率の上昇に寄与していた。

しかし、結婚に対する価値観が変化した現在では、「家」はかえってしがらみとなる。義父母との同居や親の介護への圧力は、結婚を遠ざける方向に作用する。その結果、東北の出生率は低くなる。

反対に、西南日本では義父母との同居はほとんどなく、長男が家を継ぐことへの圧力も東北ほどは強くない。したがって、結婚へのハードルが低く出生率も高くなる、という因果関係が想定できる。

東北の20~30代男性は地元に残りがち

ここで示した家族規範と出生率の関係はあくまで仮説であり、明確に論証されたものではない。また、東北における公共事業の削減や、製造業の衰退のような経済的要因、そのほか東日本大震災の影響も指摘されている。

出生率の地域差はさまざまな要因が組み合わさって生じるが、そこに明確な東西パターンが見出せることを踏まえると、家族規範のような文化的要素の影響は否定しがたい。

「出生率はなぜ『西高東低』になったのか」という問いへの回答は、ひとまず以上の通りである。これを踏まえて、出生率以外のさまざまな人口統計に見られる東西パターンを紹介したい。

東西の差は、若年人口の性比(男女比)にも見出すことができる。都道府県ごとの20~30代人口の性比を見ると、明らかに東日本は男性が多い(図表5)。反対に、西日本においては鹿児島をはじめとして女性比が高い県がいくつも存在する。

20~30代人口性比
出所=『新しい日本地理