1930年の出生率分布は正反対だった

図表2は、1930年の都道府県別出生率を示したものである。

なんと、現在とは正反対の分布になっている。最も高いのは青森県(6.30)、最下位は大阪府(3.19)である。4.70という全国平均の高さも驚きだが、現在は1位であるはずの沖縄県が1930年時点では出生率3.69でワースト4位になっているのも目を疑う。

東北と九州の各県の出生率
出所=『新しい日本地理

こうした戦前の状況を踏まえると、「暖かい地域は性におおらかなので出生率が高い」という、気候と出生率を直接結びつける説明はまったく的外れであることが分かる。まさか、戦前は沖縄よりも東北のほうが暖かかったわけではあるまい。

「男尊女卑だから」も理由にならない

また、「九州は男尊女卑なので出生率が高い」という説明についても疑問が残る。戦前は東北のほうが男尊女卑だったのだろうか。現在の出生率の分布だけを見た推論は信頼性に欠けるし、いわんやそこから「出生率を高めるためには男尊女卑もやむを得ない」といった主張をするのはあまりに乱暴である。そもそも「○○は男尊女卑な地域」という物言い自体、地域差別につながりかねない危うい主張である。

日本における出生率の分布は、戦前から現在に至るまで複雑な推移を見せており、簡単に説明できるものではない。人口学や社会学など多くの分野から研究がなされている現在でもなお、地域差を説明できる明快な理論は見出されていない。

こうした状況を理解しつつも、本書では「出生率はなぜ『西高東低』になったのか」という問いについて、無謀にも説明を試みる。新書という媒体の都合上、論文のような厳密な議論は難しい。これから行う説明は、あくまで仮説という点を踏まえた上で読んでいただきたい。

日本の出生率は1950年代に大幅に下がったのち、1960年代後半から1970年代前半にかけて微増する。ちょうど、大人になった団塊世代が子供を産むようになった、第二次ベビーブームの時期に相当する。

その後、徐々に出生率は低下するが、2005年を境として、にわかに上昇をし始める。しかしその傾向も長くは続かず、2016年からは再び減少傾向となる。2005年から2015年にかけての出生率上昇については、「テンポ効果」という統計上のマジックによる見かけ上のものにすぎないとの仮説が提示されている(『新しい日本地理』コラム⑥で詳しく解説)。