九州が回復し、東北は低迷した理由

ここで、東北と九州の違いを見てみよう。図表3で示したように、東北と九州の出生率に差が開くのは2005年以降である。九州が全国平均以上の回復を見せたのに対して、東北の出生率は伸び悩んだ。現在にまで続く西高東低の傾向は、2005年以降に形成されたと言ってよい。では、この差異はどのようにして生じたのだろうか。

東北と九州の各県の出生率(1980年以降の拡大図)
出所=『新しい日本地理

日本の場合、出生率は有配偶率(15歳以上の人口のうち、結婚している人の割合)と強い相関関係があることが知られている。日本では非嫡出子(婚姻関係に無い男女の子)の割合が極めて低いためである。有配偶率の地域差に関して、社会学者の益田仁は、次のような仮説を提示している。

(……)東北地方では家族規範が足かせとなり結婚が困難化した一方で、九州地方では歴史的に長男(ないしは男性)に親扶養の期待がかけられることは少なく、逆に女性にそれが期待されるために、九州の女性人口比が多くなる(その結果、結婚しやすい土壌ができ男性未婚率は低下する)。つまり、九州地方の価値志向は東北地方と比較して、結婚の個人化の波と相性が良かった可能性がある(*2)

伝統的家族規範と、現代的価値志向が組み合わさった帰結として、九州の出生率が高くなっているのだという。この仮説について、もう少し噛み砕いて説明しよう。

「裏日本」は三世代世帯が多い

日本の伝統的な家族形態は、大きく東北日本型と西南日本型に分かれる。東北日本型は単世帯型直系家族制とも言われ、一つの家屋に親夫婦と子夫婦の二世代、あるいは孫などを加えた三世代以上が同居する形態をとる。これに対し、西南日本型は複世帯型直系家族制とも呼ばれ、家長を退いた親が子と別居する隠居制をとる。

そうした差異は、現代の統計からも読み取ることができる。三世代世帯の割合(図表4)を見ると、東日本のとりわけ日本海側で高い。山陰でも高いことを踏まえると、雪が多い「裏日本」の風土が、三世代世帯の多さにつながっていると考えられる。反対に、西日本では三世代世帯が全体的に少なく、鹿児島県では2%を下回る。

三世代世帯割合
出所=『新しい日本地理