過去の失敗を踏まえた水平分業体制
RTXスパークの開発体制を見ると、エヌビディアが水平分業を重視していることは明確だ。実は、エヌビディアが、AIパソコン向けのプロセッサー開発に取り組んだのはRTXスパークが初めてではない。
2011年、エヌビディアは、パソコンからサーバーやスーパーコンピューターで使える、自社製のCPUとGPUを結合したチップの創出を目指した。この時もCPUの基本設計は英ARM(アーム)の技術を使った。ただ、当時はRTXスパークと違い、アプリ制御などの指示回路を自前で開発しようとした。
結果として、当時のエヌビディアのプロセッサー開発は、ITデバイスの性能向上スピードに追い付かなかった。2016年、当時のエヌビディアは計画を中止した。その教訓を活かし、RTXスパークの開発では、徹底した水平分業体制をとった。
次世代半導体の量産を目指すラピダス
わが国の企業は、そうした変化に確実に対応することが必要だ。現在、わが国の産業界には、AIを開発できる有力企業も、ハイパースケーラーと呼ばれる大手IT先端企業も見当たらない。一方、半導体の製造に必要な部材、製造装置、そして先端チップの製造技術や実装に取り組む企業はある。
注目すべきは、2027年に回路線幅2ナノ(10億分の1)メートルのAIチップ量産化を目指すラピダスだ。すでに世界の先端半導体開発は、1.4ナノレベルに移行した。2028年にTSMCは1.4ナノチップを量産する計画だ。中国でもファーウェイなどが1.4ナノチップの開発を急加速させている。
おそらく、米国はAIパソコン向けの先端プロセッサーに関しても、自国内での製造を求めるだろう。台湾の電力、人材などの不足に対応するため、TSMCが関連産業の集積するわが国で直接投資を積み増す可能性もある。そうしたチャンスを生かすため、ラピダスの事業は重要だ。
日本企業が世界のAIの波に乗り遅れると、「IT後進国」に続き、「AI後進国」ぶりが鮮明化する恐れは高まる。AIの世紀では、水平分業はさらに加速するだろう。わが国が加速度的な変化に対応するため、何としても波に乗り遅れてはならない。


