AI最大のリスクは「個人データ流出」
RTXスパークは、AIをより身近に使うデバイスの一つとして、新たなPC需要を創出する可能性もありそうだ。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、RTXスパークをこう説明した。「このチップは、クラウドコンピューティングのみに依存するのではなく、AIエージェントをローカルで実行するよう設計されている」と表現した。
重要なポイントは、それぞれの人が独自にAIに関するオペレーションを実行できるようになることだ。
現在、わたしたちがAIを使う際、入力するプロンプトやコードは、AIデータセンターにあるサーバーで処理される。その場合、パソコンはデータをやり取りするインターフェイスの役割を果たす。個人や企業のデータは、PCを通ってデータセンターに送られ、処理される。その分、個人データ流出の危険性は高まる。
そのため、金融や医療など、プライバシーにかかわるデータがある場合など、AIの利用に慎重を期す企業は多い。AI開発企業と契約を結び、コストをかけて自社用に機能をカスタマイズするケースもある。この場合、高度なデータ分析を行おうとすると、会社のPCでは制限がかかり、不満を感じる人もいる。
自分の、あるいは自社のPC上で、ネットに接続せずにAIを使えると、企業の事業運営の効率性は高まるはずだ。RTXスパークをきっかけに、AIパソコンの需要は急増すると予想される。
「AIパソコン」への期待感が株価に反映
すでに、既存のパソコン需要は飽和状態にある。2020年から2022年、コロナ禍による在宅勤務増などの上振れはあったものの、過去10年間の平均出荷台数は、年間2億8千万台程度だ。本年はメモリー価格高騰の影響で、PCの出荷台数は下振れるとの予測は多い。
単一のプロセッサーでAIを動かせるPCが登場すれば、価格が高くても欲しいと思う人は増えるだろう。単一チップでAIを動かせるパソコンの需要が世界全体で増えるとの期待は高まっているようだ。
5月末から6月初旬、エヌビディア株が上昇した半面、インテルやAMDの株価が下落したのは、そうした変化を想起させた。パソコン市場では、AIパソコンの開発や受託製造面で優勝劣敗が鮮明になることも予想される。
