悲劇が起こる前に事件を解決

そして古畑は、安斎と対峙する。

安斎は、妻を殺すのではなく、拳銃で自ら命を断とうとしていた。古畑は、その意図するところを解き明かし、自殺を思いとどまらせようとする。だが安斎はそれでも死を望む。

「お察しします」と安斎の心情をくみ取りながらも、古畑の言葉は熱を帯びる。「しかし、しかし、あなたは死ぬべきではない。たとえすべてを失ったとしても、我々は生き続けるべきです」「また一からやり直せばいいじゃないですか」「明日死ぬとしても、やり直しちゃいけないと誰が決めたんですかっ?」。

この言葉を聞いていた安斎は徐々に表情をやわらげ、最後は考えを改める。「悲劇が起こる前に事件を解決したい」という古畑の「夢」が叶ったわけである。

幻の最終回と言われるワケ

第1シーズン初回に登場した小石川ちなみ(中森明菜)の愛犬が再び登場するといったちょっとした楽しみもあるこの回だが、視聴者への呼びかけの場面で、古畑はこの回を「実は最終回に持ってこようと思っていた」と語っている。むろんそれは、脚本の三谷幸喜の思いでもあったはずだ。

事件が未然に防がれれば、当然事件は起こらない。それは究極の理想ではあるが、それでは刑事ドラマというもの自体が成立しなくなる。だから、本来は最終回にすべきだったという意味合いだろう。

だが、あえてこうした回をつくり、刑事ドラマというジャンルを根底から覆そうとしたところに『古畑任三郎』の斬新さ、そして真骨頂はあった。

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