キムタクが演じた身勝手な犯人
「赤か、青か」は、木村拓哉が犯人役だった。初回放送は1996年1月31日。視聴率は26.1%(関東地区世帯視聴率。ビデオリサーチ調べ。以下同じ)と高視聴率を記録した。この回は、旧ジャニーズ事務所による肖像権管理の関係で長らく再放送や配信がされていないとされる(一時的に再放送がされたことはある)。
木村拓哉は、放送時23歳。社会現象になった『ロングバケーション』(フジテレビ系、1996年4月から放送)の少し前。しかしながら、すでにSMAPはブレークし、木村自身も『あすなろ白書』(フジテレビ系、1993年放送)で俳優として一躍脚光を浴び、出演ドラマや映画が相次いでいた。
ただ、この回の木村拓哉の役柄は、アイドルが演じそうな典型的な役柄ではない。犯人役ということもあるが、動機がきわめて身勝手で同情の余地がない人物だ。だがそのインパクトゆえにいまも語り継がれている。
木村が演じる林功夫は、天神大学電気工学部の助手。大学のすぐ近くの遊園地に深夜忍び込み、観覧車に爆弾を仕掛ける。ところが、立ち去ろうとしたとき警備員に見とがめられ、口封じのために殺してしまう。そして翌日、現場検証の最中に林から爆破予告の電話が入る。タイミング悪く、そのとき観覧車には今泉(西村雅彦[現・西村まさ彦])が乗っていた、という展開だ。
古畑が唯一手をあげた
状況証拠をもとに、古畑は林を犯人とにらむ。爆破を防ぐためには、起爆装置についた赤か青かどちらかのコードを切断する必要がある。それを特定するため、古畑と林の緊迫した駆け引きが繰り広げられる。タイムリミットが迫るなか、古畑が林に逆トリックを仕掛けるところも見どころだ。
そしてこの回がいまも語り草なのは、古畑が珍しく感情をあらわにする場面があることだ。
最後、林に爆弾を仕掛けた理由を問いただすと、「邪魔なんだよ」という答え。観覧車によって部屋の窓から時計台が見えなくなったから、と林は悪びれもせずに言う。
あまりの身勝手さに、古畑は無言で林の頬を裏拳でビンタする。こんなときでもビンタの仕方がスタイリッシュなのはいかにも古畑らしいが、その表情はいつになく険しい。怒りがにじみ出ている。とはいえ、その後に痛そうに手を振るのだが。
そういうわけで、この回は古畑が唯一犯人に手をあげた回でもある。その行動に説得力を持たせる林の冷酷さを巧みに表現した木村拓哉の演技など、見どころが多い。
大谷亮介が警部役で出演しているのも、刑事ドラマファンにとっては注目ポイントかもしれない。大谷は、この後『相棒』(テレビ朝日系、2000年放送開始)に登場する「捜一トリオ」のひとり、三浦信輔役で広く知られるようになる。

