「捏造だ」と突っぱねた過去の成功体験

さらに、高市早苗という政治家には、今回とよく似た局面を乗り越えた経験があります。2023年春、立憲民主党が総務省の内部文書を公開した際のことです。文書には、高市総務大臣(当時)が2015年の国会答弁の作成過程に関わったとする記述が含まれていました。

高市さんはこれを「行政文書ではなく捏造だ」と断言し、「事実なら議員を辞職する」とまで言い切りました。その後、総務省が「行政文書として確認した」と認めたにもかかわらず、高市さんは議員どころか大臣すら辞職しませんでした。強い言葉で打ち返し、批判の勢いをかわすという手法が成功したことになります。

今回の対応の根底にも、おそらく同じ成功体験があるんだろなあと思われます。政治的な態度を明確に示し、威圧的に強く言い切れば乗り切れるという経験則です。

高支持率でも、国会・党運営に行き詰まり

しかし放送法問題のときと今回では、決定的に異なる点があります。当時はただの閣僚で、しかも端牌の経済安保担当大臣でしたが、今回は首相、総理大臣です。そして、当時は内部文書の「真偽」が争点でしたが、今回は43分の音声という第三者が検証可能な記録が存在します。繰り返しになりますが、そこで戦って何の意味があるのかさっぱりわからないところでめっちゃ突っ張るので、みんな困惑することになります。それ、自滅とちゃうの?

首相の座にある者が国会で事実に反する答弁を続けることは、単なる個人の政治的問題にとどまりません。ただでさえいま大変な官邸の政策調整機能そのものが止まり、政権の求心力が急速に失われるリスクをはらんでいます。いくら国民からの支持率が高くても、国会・党運営に行き詰まってしまえば国民にとって利益はまったくありません。

曇り空を背景にした国会議事堂
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周辺も党本部も「危機管理ができていない」と困惑しながら指摘するのは、スキャンダルの内容そのものではなく、事態を収拾するための内部コミュニケーションが完全に機能停止しているという構造的な問題に対してです。