「モリカケ問題」と同じ構造
この問題を眺めながら、私らモノ好きがどうしても想起してしまうのは、安倍晋三政権下で問題となった森友学園・加計学園をめぐる一連の疑惑、いわゆるモリカケ問題です。
2017年2月、安倍首相(当時)は国会で「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」とまで、勇ましく踏み込んで述べました。意図したかどうかはともかく、この言葉はひとつの防衛ラインとなりました。その後、首相動線の公文書改竄が発覚し、財務省の担当者が自死するという最悪の事態が生じました。官僚が忖度した根底には、「総理が辞めると言ったのだから」という暗黙の圧力があったとされています。強い言葉で引いた一本の線が、周囲の判断を歪めていったのです。
言わんでもいいことを言ったので、総理の首を取りたい野党やマスコミも総立ちになって、本来そこまで大きな問題とは言えなかった森友学園や加計学園のネタが、あたかも安倍家の“政治ビジネス”と直結しているかのような大ネタに化けてしまったことになります。
政治家が「辞職も辞さない」と述べたとき、それは相手への牽制である以上に、自分自身を縛る言葉になります。要は、本当にそういうことはないので信じてください、という意味合いで「うっかり政治生命を賭けてしまった」結果、退けない戦いが発生するという次第です。
安倍首相が関与した証拠は出なかったが…
今回の高市首相も、同じ構造のなかにいます。「秘書を信じる」「違和感がある」という言葉は、音声を聴けば聴くほど答弁との距離が開いていきます。しかし首相は引けません。引いた瞬間に、それまでの国会答弁が虚偽だったという認定に直結するからです。答弁の修正に追い込まれるだけでなく、事実関係の追及をちゃんとやらないと疑惑は収まらないという最悪な経路を踏むことになるのです。
森友問題と異なるのは、首相の安倍晋三さん自身、実際には「首相自身が直接関与した証拠」がついに表に出なかった点です。言い方は悪いですが、安倍晋三さんとの若干の交友関係のある筋が、首相に返り咲いた安倍さんの名声に乗っかり、必要な事業を実現するために勝手に働きかけましたという程度の話であって、安倍さんは特にカネを手にしたわけでもありません。
しかしながら今回は、秘書と実行役の具体的なやり取りが記録として残っており、しかもその音声が公開されています。証拠の質と量において、当時と状況がかなり異なります。「私も秘書も面識はなかった」のであれば、サナエトークンを応援するSNSポストを出した「Veanas合弁会社」が高市早苗事務所と同じ登記地であることも踏まえるといろんな想いが心を去来します。

