社長は「プライドの高いエンジニア」
中鉢は宮城県出身で東北大を卒業後、ソニーに入社したものの、カセットテープや電池などを所管する仙台の工場に勤務する時代が長かった。「仙台の伊達政宗がいきなりホワイトハウスに来たような感じでした」。中鉢側近の社長室長はそう観察した。
仙台ではすべてのことを掌握しきれていたが、ソニー本社に乗り込むと、ゲームも金融もエンタメもわからない。エレクトロニクス部門を所管しているのに、デバイスの世界を中心に歩んできたから、テレビやビデオ、オーディオといった消費者相手の家電ビジネスに自信がなかった。「プライドの高い人だから、馬鹿にされたり不用意なことを言ったりするのが嫌なんです。そうなると黙ってしまって、コミュニケーションもとりにくくなっていきました」(社長室長)
中鉢は器量不足だった。「目の付けどころがいつも重箱の隅なんです」。CFOを務めた大根田はそう言って困惑していた。「とてもちっちゃいことで真っ赤になって怒るんです。こんなんじゃ、構造改革や成長戦略を語れないなと思いました(*9)」。ストリンガーはそんな中鉢に辟易としていた。彼を外して自らが社長も兼務し、エレクトロニクス部門も手中に収めようと考え、その意を体して藤田が中鉢を「副会長」に祭り上げようと動いた。
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