司法判断を拒み続ける中国
テオドロ氏の対中不信は止まらない。今年のシャングリラ会合の別の対談では、2016年の裁定を頑として認めようとしない中国を批判した。
これは、いわゆる「南シナ海仲裁判断」をめぐる中国の反応を指したものだ。中国が南シナ海のほぼ全域に引く「九段線」を根拠とした「歴史的権利」の主張は、国連海洋法条約(UNCLOS)上の法的根拠がないなどと、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が判断した。フィリピンのほぼ全面勝利に終わったが、中国はこの裁定を今なお拒み続けている。
フィリピン調査報道メディアのラップラーによると、テオドロ氏は、フィリピンなどで行われているとされるスパイ活動や影響力工作にも警戒の色をにじませている。「平和への脅威」と日比間の協力に冷や水を浴びせた当の中国こそ、他国の脅威になっている。
対照的に日本に関しては、各国の当局者や、地域に暮らす人々から厚い信頼が寄せられている。発言録によると、シャングリラ会合のQ&Aセッションでは、東南アジアにおける安全保障協力をめぐり、日本が一貫して大国の期待を上回る動きをみせているとの声が出た。
ASEANで高まる日本への信頼感
民間レベルの声としては、ISEAS・ユソフ・イシャク研究所が今年1月から2月、ASEAN全加盟国の学者、市民、政府関係者など2008人を対象に、オンラインで各国への「信頼度」を尋ねている。世界全体の利益のために「正しいことをする(do the right thing)」かを質問し、「信頼できる」「非常に信頼できる」を集計したものだ。
結果をまとめた「The State of Southeast Asia: 2026 Survey Report」によると、日本の信頼度は65.6%で首位となり、2位欧州(55.9%)、3位アメリカ(44.0%)、4位中国(39.8%)を引き離した。
中国が敵に回してきた相手は、フィリピンにとどまらない。欧州からは、オランダ海軍の艦艇が口撃の標的となった。
中国人民解放軍国防大学教授の劉万霞上級大佐が、オランダの国防相に問いをぶつける形で発言。5月27日にオランダ海軍の艦載ヘリコプターが中国の西沙諸島(パラセル諸島)付近の領空に不法侵入したと主張し、いわゆる「航行の自由」を口実に中国の主権・権益と海上・空域の安全を著しく侵害していると論じた。
オランダのディラン・イェスィルギョズ=ゼヘリウス副首相兼国防相は、これに静かに反論。「我々は対立を求めて来ているのではない。フリゲート艦による協力を求めて来ているのだ」と諫めた。

