これで「軍拡していない」わけがない

国防予算の規模でも、ストックホルム国際平和研究所によると、2025年のアメリカの軍事支出の約3分の1を占め、世界第2位につける。両国の格差は、前年の3.2倍からはいくらか縮まっている。

中国が世界全体の軍事支出に占める割合は、12%。その存在感は今後さらに大きくなる可能性がある。「新型軍国主義」と煽った中国は、まるで自国が軍拡路線を歩んでいないと主張したいかのようだが、こうしたデータとの乖離が著しい。

人民解放軍はこうした増強策を推進することで、「2035年までに全軍事領域で近代化を完了する」という長期目標へと、一歩ずつ歩を進めている。

中国はミサイルをめぐり、日本やアジア諸国との緊張を深めた過去がある。

2024年9月、中国が非武装の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋へ向けて発射したと、米国防総省は指摘する。太平洋への発射は、1980年以来じつに44年ぶりのことだった。

機種は人民解放軍ロケット軍のDF-31B。海南島の北部から打ち上げられ、約1万1000キロを飛んで仏領ポリネシア近海に着弾した。

中国は事前に、アメリカやフランスを含む一部の国には発射を通告していた。ところが、同じ太平洋に面する隣国でありながら、日本とフィリピンには、ひと言の断りもなかった。

DF-31 大陸間弾道ミサイル(ICBM)
DF-31 大陸間弾道ミサイル(ICBM)(写真=Tyg728/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

慎重な立場を取ったマレーシアの戒め

2024年12月には、中国海警局の船舶がフィリピンの船1隻に放水砲を浴びせている。現場でフィリピン人の漁民を支援していた別の複数の船には、横腹をこすりつけるなどの攻撃的な操船を仕掛けた。一歩間違えば惨事を招きかねない、危うい操船だった。

日本の軍国主義化をめぐりアジアに警鐘を鳴らす中国だが、発言国自身のこうした経歴を振り返れば、アジア諸国にどれほどの説得力をもって受け止められるか疑問だ。

このように中国がかき乱したシャングリラ会合にあって、付け加えるならば、反中国・親中国の二極化を避けようとする国もあった。

マレーシアのモハメド・カリド・ノルディン国防相は、中国にも西側にも与しない慎重な立場を保った。カリド氏は対談で、東南アジアはいま、地政学的な対立や経済圏の分断、技術をめぐる競争、そして「戦略的な強制」の圧力にさらされ、各国はどちらの側につくかを迫られていると言及。名指しを避けたが、中国とアメリカを念頭に置いた発言と取れる。

だが、ASEANは強制や政治的取引を武器に渡り合う場ではない。対話と合意、互いの尊重、そして地域の安定への共同責任こそがその礎なのだと、同氏はASEAN地域の原則をあらためて示した。

カリド氏が繰り返し訴えたのは、国際法は国の大小や富、軍事力や地政学的影響力の差にかかわらず、すべての国へ等しく適用されねばならない、という1点だった。