透明性を欠く中国の軍拡路線
小泉氏は「中国の対外的な姿勢と軍事活動は、日本にとっても国際社会にとっても、同時に深刻な懸念事項だ」と指摘。どちらが懸念されるべき存在なのかと、小泉氏は国際社会が注目する会合の場で、その照準を静かに、そして鮮やかに向け替えてみせた。
国防費を高水準で増やし続ける中国は、その使途をめぐる透明性をほぼ欠いたまま、軍備拡張路線を歩んでいる。米国防総省の分析によると、中国が公表している国防予算は、習近平氏が中国共産党総書記に就任した翌年の2013年と比べ、ほぼ倍に膨らんでいる。
そして、その膨れ上がった予算は、軍事技術の開発加速にも充てられているという。軍事用AI、バイオテクノロジー、そして極超音速ミサイル。こうした先端分野の研究開発に、中国はいよいよ拍車をかけている。
米国防総省の分析によると、中国が2024年に投じた国防支出の総額は、およそ3040億〜3770億ドル(約48兆6000億〜60兆3000億円。6月3日現在のレート、1ドル159.88円で換算、以下同)に上るとみられる。公表された予算は2310億ドル(約36兆9000億円)にすぎなかったが、実際の支出額は、公表値を32〜63%も上回る計算になる。
予算に算入されない「隠れ軍事費」の数々
この開きが生じるのは、公表予算に算入されない費目があるからだ。
人民武装警察、地方の治安維持、退役軍人の関連費、動員活動関連費、さらには国防がらみの研究開発や設備投資。こうした費目が表向きの予算のほかにひそかに支出されていると、米国防総省は指摘する。
では、日本はどうか。防衛費こそ近年伸びてはいるものの、その規模も中身も、中国とはまるで傾向が異なる。
スウェーデンのシンクタンクのストックホルム国際平和研究所は、2025年の日本の軍事支出は約622億ドル(約9兆9400億円)であったと分析。中国の実支出の最大値と比較すると、約16.5%にとどまる。1958年以来の最高値にある現在でさえ、日本のGDPに占める割合は1.4%にすぎない。
もっとも前年から9.7%、2016年と比べれば実に61%の増加ではある。2022年に着手した防衛力増強計画を着実に進めるためのものだと、同研究所はみる。こうした増強の背景にあるのは、言うまでもなく中国と北朝鮮をめぐる安全保障上の懸念である。中国側は日本の軍国主義化に警鐘を鳴らすが、因果関係が無視されているようにも思われる。

