軍の空洞化よりも深刻なこと
軍の中枢が空洞化したこと以上に深刻なのは、習近平氏が耳を傾けるべきブレーンを次々と失っていることである。
「台湾侵攻は無謀だ」「軍拡より経済を優先すべきだ」と直言できる軍人や側近を習近平氏は排除してきた。周囲にはイエスマンだけが残っている。軍内部では「やりすぎだ」と不満が高まっていると伝えられている。
独裁者の疑心暗鬼は、自らを守るための行動に見える。しかし実際には、自らを孤立させる過程でもある。
経済問題も大きい。
16〜24歳の若者失業率は、2026年3月時点で16.9%。中国の不動産市場はなお調整局面にあり、約145兆元規模の下落が見られた。2026年5月の為替レートで計算すれば、2900兆円前後が失われたことになる。不動産が家計資産の大部分を占める中国では、この影響は庶民生活に直結する。2026年の成長率予測は4.4%(伊藤忠総研)と、2025年の5.0%から減速する見通し。物価も安定しておらず、CPIは月ごとに上下している。数字を並べるだけで、中国経済が重い停滞に沈んでいることが浮かびあがる。
中国はどこで着火するかわからない状態
中国国内の抗議行動やデモを集計するサイト「昨天」プロジェクトによると、中国国内の抗議活動件数は2026年1月50件、2月43件、3月76件、4月74件と高水準で推移している。内容は、民主化を求めるなどの政治運動ではない。賃金未払い、火葬場建設反対、銀行預金が引き出せない、工場の突然閉鎖――生活に密着した権利主張が中心だ。
注目すべきは、少数民族が多い地域ではなく、漢民族の地域で多発している点である。
現在の中国は「乾ききった薪の山」で、どこで着火するかわからない。
疑心暗鬼に陥り、側近を粛清し、孤立を深めて制御を失った指導者――ちょうど60年前にも同じ構図が見られた。文化大革命がはじまる時期である。
