トクリュウには「部長」も「課長」もいる

トクリュウたちは、投資した事業を個別に分割し、それぞれに「部長」や「課長」などと名付け、責任者を置き、事業目的と権限を明確化、責任の所在を明らかにすることで、そこから生まれる利益(プロフィット)を見える化していた。

こうした手法を磨き上げて取り入れていることが明らかになったのが、国内最大の違法スカウト集団「ナチュラル」事件である。

その実態は、およそスカウトという言葉からはかけ離れた、冷徹で機能的な「犯罪企業」であった。最高幹部の男を頂点に、数千人のスカウトを統率するだけではなかった。

警察の捜査を阻む「ウイルス対策課」や、違法利益を確実に吸い上げる「集金課」、さらには独自の暗号通信を保守する「アプリ課」まで。驚くほど細分化された組織構造を構築していた。年間45億円もの巨額の紹介料を叩き出し、暴力団の懐を潤す一大資金源として機能していた。

大量の札束
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ナチュラルが消えても別組織が出てくるだけ

この巨大な闇が白日の下にさらされた発端は、あまりにも泥臭い内紛劇だったという。

2020年、東京・歌舞伎町のど真ん中で、暴力団組員らによる大規模な「スカウト狩り」の乱闘騒ぎが起きた。白昼堂々の凄惨な抗争劇に激怒した警察当局が本腰を入れ、一斉摘発の火蓋が切られたのだ。裏切り者への集団リンチや、警視庁の元警部補に捜査情報を流させるスパイ工作など、異常な実態が次々と暴かれていった。

事件は今まさにクライマックスを迎えている。強制捜査の手を逃れ、約1年間にわたり潜伏していたトップの男が、2026年1月に鹿児島県・奄美大島で逮捕された。5月に東京地裁で開かれた初公判で、法廷に現れた男は「争いません」と起訴内容を認めた。ただ、警視庁の捜査関係者は言う。

「実態の解明とは程遠い。似たような組織はいくらでもある」

ナチュラルが抜けた穴にうまく収まろうとする別のトクリュウたちも暗躍する。もぐら叩きに、いたちごっこ、賽の河原である。