10代から選抜される「国家の稼ぎ手」

こうした仕組みは、偶然に生まれたものではない。北朝鮮は、理数系教育と情報技術教育に国家的な資源を投じてきた。2022年の米政府注意喚起文書は、北朝鮮が数学や科学教育を重視してきたことを指摘している。

選抜は早い。理数系の才能が認められた児童は、平壌の特別教育機関や第一中学校に集められ、10代のうちに数学・情報科学の英才教育を受ける。そこからさらに金日成総合大学や金策工業総合大学に進む者は、国家にとって「外貨の稼ぎ手」候補として明確にマークされる。

貧しい国が高度なプログラミング人材を育てる理由は、軍事と外貨の両方に使えるからである。ソフトウェア開発、暗号資産関連技術、人工知能、情報セキュリティの知識は、合法的な仕事にも使える一方、国家の指揮下に置かれれば外貨獲得や攻撃活動にも転用される。

人材育成は、単なる教育政策ではない。早くから有望な子供を選び、競争させ、専門教育に送り込む。そこで身につけた技能は、本人が好きな職業を選ぶためだけに使われるわけではない。国家が必要とする部署に配置され、稼ぐ力として評価される。北朝鮮ハッカーの実態を考えるうえで、攻撃の手口より先に見るべきなのは、この人材供給の仕組みである。

この構造は、若者にとっては栄達の道にも見える。貧しい社会で高度な教育を受け、海外や外貨に近い仕事へ進むことは、本人や家族にとって大きな機会になりうる。だが、その機会は体制への忠誠や成果によって支えられている。エリート教育と自由な人生は、必ずしも同じではない。

つまり、北朝鮮の理数系エリートにとって「優秀である」とは、自由な研究者になることではなく、国家収益網のどのポジションに配置されるかを決める評価指標である。

北朝鮮学生がハッキング大会で1〜4位を独占

選抜され、育成された若者たちの技能水準はどの程度なのか。それを最も鮮烈に示したのが、2023年のある国際大会の結果である。

2023年7月8日に配信されたTBS NEWS DIG with Bloombergの記事によれば、IT企業ハッカーアースが開催したオンラインのハッキング大会で、約1700人の参加者の中から北朝鮮の大学生が1位から4位を占めた。1位は金策工業総合大学、2位は金日成総合大学の学生だったという。

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一つの大会結果だけで北朝鮮全体を語ることはできない。それでも、国家が理数系人材を見つけ、競争させ、磨き上げていることを示す一例ではある。