人間愛あふれる“下町気質”

母はずっとハイブランドのファッションショーなどでモデルを相手にヘアメイクを行ってきました。それがプライベートサロンを立ち上げてからは、一般のお客様に向けてそれぞれの美を提案することになります。プロから個人へ。その対象が変わったことで、彼女のなかに混乱が生まれたこともあったと思います。でも「人が好き」という気質がエンジンになったのでしょう。お客様への愛情が何よりも勝り、この仕事が天職になっていったのだと思います。

ビューティクリエイターの美木ちがやさん。
撮影=奥村康人(News)
ビューティクリエイターの美木ちがやさん。

その例でわかりやすいのがウエディングの仕事です。お祝いムードたっぷりの現場はハッピーオーラに満ちていて、私たちスタッフも自然とテンションが上がります。花嫁さんを世界でいちばん美しく見せるのが仕事ですから、とにかくすべての言動が“新婦ファースト”になる。母にそのスイッチが入ったときの集中力やエネルギーは、娘の私から見ても迫力あるものなのです。

母は日本橋の生まれで、下町気質。義理人情にあつく、世話を焼くのをいといません。花嫁さんはもちろんのこと、もっと美しくなりたい、時には自分を変えたいという願望を胸にサロンへと来てくださる方のために、根気よく話を聞きながら並走します。その姿を見ていると、「あなたのためならひと肌脱ごうじゃないの」という意気込みや肝っ玉を感じます。その思いが極まって、お客様自身が余計な手を動かそうものならピシャッと払ったりして、こちらが冷や冷やすることもあるのですけど(笑)。