アメリカと中国の国旗
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ドナルド・トランプ米大統領は予測不能。世界からそのような評判を受けている。

しかし、今回の中国訪問では、国際交渉でまず圧力をかける傾向を持つアメリカの指導者としては別の一面を見せている。

トランプは習近平(シー・チンピン)国家主席について、「われわれは共に素晴らしい未来を築くことになる。中国に大きな敬意を抱いている。あなたの成し遂げてきた仕事にもだ」と述べた。「あなたは偉大な指導者だ。私は誰にでもそう言っている。あなたは偉大な指導者だ。私がそう言うのを好まない人もいるが、それでも私は言う。なぜなら、それが真実だからだ」

米中首脳会談で、トランプが称賛、礼節、協力の姿勢に徹していることは、ほかの交渉の場で政治的、経済的、軍事的な威嚇を公然と振りかざしてきた、不安定でしばしば攻撃的な流儀とは全く異なる。

この手法は、多くの人々から、外交におけるいわゆる「狂人理論」になぞらえられてきた。この理論はリチャード・ニクソン元大統領と最もよく結びつけられる。ニクソンは冷戦期、ソ連寄りの共産圏と対峙する一方で中国に接近していた時期に、この言葉を作ったとされる。

この戦略は、不確実性を武器とする。敵対国も同盟国も、挑発の結果がどうなるのかをめぐって緊張状態にする戦略だ。危険で誤算を招きやすいという批判がある一方、あまりに常識外れに見えるからこそ、かえって有効なのかもしれないという支持する声もある。

いずれにせよ、国際社会でアメリカに対抗しようと試みている中国は、一貫性と安定性を好む。専門家らは、中国はトランプが「狂人」の演技をやめて善人を演じたとしても、それをすぐに受け入れるのではなく、具体的な行動を待つ可能性が高いとみている。

北京に拠点を置く公共政策系シンクタンク盤古智庫のシニアフェロー、徐勤多は本誌に対し、「確かに、トランプの予測不能性は、中国を含む多くの国に課題と頭痛の種をもたらしてきた」と語った。「中国の対応は、期待を低く保ち、慎重で控えめな姿勢を維持することだった。トランプ訪中の発表でさえ、訪中のわずか2日前に行われた」

さらに、「理由の1つは単純かもしれない。トランプの場合、最終決定までは、何も決まっていないのも同義だからだ」とも指摘。「1週間前に発表された計画が、簡単に修正され、延期され、キャンセルとなることもあり得るのだ」

ジャングルへ逆戻り

中国が気にしているのは、一貫性のなさだけではない。トランプは2026年に入ってから、脅しを実行に移す意思があることを示してきた。

1月にはベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束するために急襲した。翌2月にはイスラエルと共にイランに対する戦争を開始。イランの指導者を死亡させ、世界のエネルギー貿易に大混乱をもたらした。

さらに、キューバに石油または石油製品を輸出する国に関税を課すと脅す一方、キューバ当局者への制裁を強化した。

徐は「中国から見れば、ベネズエラで起きたこと、キューバへの長期にわたる経済的圧力、イラン戦争は、いずれも国際秩序がどこへ向かっているのかという、大きな不安を中国側に抱かせている。」と述べた。「中国では多くの人が問うている。われわれは、強者ができることを行い、弱者が耐えられることを耐えさせられる、弱肉強食の法に支配される世界へ戻りつつあるのか、と……もしそれが常となれば、それは小国や中堅国だけでなく、人類にとっても悲劇だ。より良い未来へ進むのではなく、古い世界へ戻ることになるのだから」

駐米中国大使の謝鋒(シエ・フェン)も本誌のインタビューに対して同様の主張を展開している。「いかなる国も、他のすべての国の上に自国を位置づけて、自国の規則を選択的に適用すべきではない……人類社会はジャングルへ後戻りする危険がある」

台湾問題の行方は

中国が最も懸念しているのは台湾問題だ。台湾は中国が領有権を主張しているが、アメリカから政治的、軍事的支援を受けている。

アメリカは、1979年にニクソンが中華人民共和国へ舵を切って以来、台湾と正式な関係を持っていない。

ただ、トランプは過去に、台湾問題に対してアメリカが取っている均衡策の有用性に疑問を呈してきた。

実際、2025年12月に台湾に対して、過去最高額となる110億ドルの武器売却をすでに承認している。さらに、大規模な140億ドル規模の案件も進行中だ。

台湾問題は、トランプの中国訪問の中心課題の1つでもある。トランプによる台湾問題への介入は、中国にとっては不吉な兆しだ。

徐は、「台湾問題はいっそうセンシティブなものになる」と指摘する。「中国の懸念は、単に武器売却や政治的象徴に関するものではない。アメリカが今もなお、意見の食い違いを責任ある形で扱う意思を本当に持っているのか、それとも台湾が中国との戦略的競争における地政学的な道具として扱われるようになるのか。これらの点を問題視している」

これまでのところ、トランプの発言は習への称賛一辺倒だ。習を「友人」と呼び、両国間の協力拡大の可能性に言及している。トランプには中国の相手に対して好意的な言葉を浴びせてきた過去があるが、トランプが訪問先の習に過度に気を遣っているように見えることには、米国内の保守・リベラル双方の一部論者から批判が出ている。

また、トランプは台湾に関する質問には沈黙を選んだ。その後、マルコ・ルビオ国務長官がNBCニュースに対し、この問題に関する政権の立場は今のところ「変わっていない」と確認するにとどまった。

一方、習は、会談の中で台湾を「米中関係における最も重要な問題」として取り上げることにも、その背後にある利害の大きさを強調することにもためらいを見せなかった。

報道によると、習は台湾問題について、「適切に処理されれば、米中関係は全体として安定を享受することになる……そうでなければ、米中は衝突し、紛争に至り、米中関係全体を大きな危険にさらすことになる」と述べた。

「『台湾独立』と台湾海峡の平和は、水と火のように相いれない……台湾海峡の平和と安定を守ることは、米中両国の最も広く共有できる利益だ。アメリカ側は台湾問題を扱うにあたり、格別に慎重でなければならない」