「タバコ×緑茶ポリフェノール」でまさかの発症率↑

日本人は胃がんに弱いのですから、やはり禁煙が不可欠です。とはいえ、喫煙率が下がっても、胃がんが目に見えて減少するには20年はかかるという試算があります。これは「タバコ病の流行モデル」と呼ばれる理論で、多くの国で、喫煙率のピークの30年後に肺がんによる死亡率がピークになったことを根拠にしています。本書で紹介したように、がんは長い期間をかけて発生するため、減少するまでに時間のズレがあるのです。この理論は喫煙を原因とする他のがんにもあてはまることから、喫煙による胃がんはしぶとく続きそうです。

男性の喫煙者がこうむる損失はまだあります。日本で12年かけておこなわれた調査から、緑茶に含まれるポリフェノールに胃がんの発生を抑える効果があるとわかりました。ポリフェノールは悪玉LDLの酸化を防ぐと考えられていて、緑茶にはポリフェノールの一種であるカテキンが入っています。実際に女性に関しては、緑茶ポリフェノールの濃度が高いグループは、最も低いグループとくらべて胃がんの発症率が70%も低くなりました。

ところが男性はこの効果が認められなかったばかりか、逆に発症率が上がる傾向すら見られました。研究者らは男性と女性の喫煙率の違いが関係するのではないかと考え、今度は性別ではなく、タバコを吸う人と吸わない人に分けて分析しました。すると、緑茶ポリフェノールの摂取量が増えると、非喫煙者は胃がんの発症率が3分の1になったのに対して、喫煙者は逆に発症率が2倍以上高くなりました。タバコを吸っていると緑茶ポリフェノールの効果がなくなるどころか、逆効果になる恐れがあるということです(*5)

詳しい研究はこれからですが、研究者らは、「胃がん予防を考えるなら、まず禁煙を」と述べています。

注がれる緑茶
写真=iStock.com/kuppa_rock
研究で、緑茶ポリフェノールの摂取量が増えると、非喫煙者は胃がんの発症率が3分の1になった。対して喫煙者は、逆に発症率が2倍以上高くなった。タバコを吸っていると緑茶ポリフェノールの効果がなくなるどころか、逆効果になる恐れがある。(*写真はイメージです)

塩分摂取が増えるにつれて発症率↑

日本を胃がん大国にした原因はまだあります。日本は胃がんが多いと言っても地域差があり、2019年に公表された「全国がん登録の概要」によると、あらたに胃がんと診断された人の割合が最も高かったのは新潟で、秋田、山形、富山、鳥取が続きました。逆に発症率が最も低かったのは沖縄で、ついで鹿児島、熊本、大分、宮崎の九州勢でした。

東北と日本海側の地域は塩分の摂取量が多いことが以前から知られていました。そのため、参加者を塩分摂取量で5つのグループに分けたうえで、10年間にわたって胃がんの発症率を調べる研究が実施されています。

すると、男性は塩分摂取量が増えるにつれて胃がんの発症率が上がり、最大で2倍以上になりました。図表4を見てください。この傾向は女性では認められませんでしたが、まだ最終的な結論が出ていないので、女性の結果は参考にとどめてください。

塩が胃がんを招くのは、塩によって胃の粘膜が荒れて、ピロリ菌の影響を受けやすくなるからとされています(*6)。男性は味の濃い外食をとる機会が総じて女性より多いため、これも胃がん発症率の男女差につながっていると考えられます。