「肉と果物の組み合わせ」が発がんを防ぐ可能性

先に見たように、米国で各人種の胃がん発症率を調べたところ、最も高いのが日系人を含むアジア系で、欧州系との差は5倍以上にのぼりました。これをさらに、世代別に比較した調査があります。図表5は、日本で暮らす日本人、米国に移住した日系一世、日系二世、米国人の胃がんによる死亡率を年齢を追ってグラフにしたものです。

これを見ると、日本で暮らす日本人より日系一世、日系一世より日系二世のほうが死亡率が低く、米国人に近づいていることがわかります。

このデータをおさめた本が出版されたのは1985年です。日系一世は日本生まれなので、おそらく大部分の人がピロリ菌に感染していたでしょう。それなのに胃がんによる死亡率が低いのは、一つには米国式の食生活になじんだことで塩分摂取量が下がったからと考えられます。

これとは別に、ブラジルに移住した日系ブラジル人の調査から興味深いことがわかりました。日系ブラジル人は牛肉の摂取量が多く、毎日牛肉を食べるグループは、1週間に3回未満のグループと比較して、胃がんの発症率が4倍も高くなります。ところが果物を毎日食べると発症率が半分になるのです(*7)

果物の抗酸化物質が影響しているか

日本で暮らす日本人は、牛肉を含む赤肉の摂取で大腸がんと、おそらくは胃がんの発症率が上がります。赤肉が発がんと関係するのは、肉に含まれる蛋白質と、他の食品に入っている硝酸塩という物質が化学反応を起こして発がん性物質ができるからと考えられていますが、まだ十分には解明されていません。この反応は酸性だと起きやすいため、胃酸によって強い酸性になっている胃の中は恰好の舞台です。

研究者らは、日本人の血が入っていない欧州系ブラジル人についても同じ調査をしましたが、欧州系ブラジル人は牛肉をしっかり食べても胃がんの発症率が大きくは上がりませんでした。ここにも人種差がありそうです。

そして果物が肉の摂取による発がんを防ぐ背景に、抗酸化物質があることがわかってきました。抗酸化物質の代表はビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、赤ワインで有名になったポリフェノール、大豆サポニンで、発がん性物質の合成を抑え、がんの予防に効果があるとされています。

果物だけでなく野菜も有効で、とくにキャベツやカリフラワー、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜を多く食べる人は、悪いエピジェネティクス変化が起こりにくいという報告があります(*8)