工期遅れでも揺るがなかった日本への信頼

加えて注目すべきは、実際の施工の大部分をベトナム企業が担った点だ。

日本側は現地企業に実務を委ね、技術と経験を蓄積させる方針を貫いた。中国関連企業が現地入りして事業の大部分を進める閉鎖的方式とは、大きな開きがある。

工期の遅れにも、現地の反応は温かかったという。インフラ事業の遅延がほぼ常態のベトナムにあって、日本主導の路線には「より寛容な目が向けられた」と同紙は記している。遅れはしたが、事故ゼロの安全性が高く評価されたこともあり、信頼が損なわれることはなかった。

長期的な成果はどうか。フルブライト大学ベトナムのヴー・ミン・ホアン教授はAFP通信の取材に対し、全14駅の1号線では、「短期的な渋滞緩和は限定的」と冷静に釘を刺す。だが、「都市開発の歴史的成果」とも評する。

ホアン教授の見立てでは、教訓を踏まえることで今後の路線を「より容易に、より速く、より安く」建設できる見込みだ。ベトナムで第1号路線を開通させた、その意義は大きい。

「恥のリスト」入りした中国企業

一方、中国側が手がけた都市鉄道は、同じく費用が膨れ上がっただけでなく、安全面で大きな課題を抱えた。

まず、費用の問題だ。中国のコントラクターを原因として工期が大きく遅延し、巨額のコスト超過に。ベトナム政府や市民から理解の眼差しが向けられることはなかった。ベトナム政府は対象業者を公的に名指しする、異例の制度を創設するまでに至っている。

問題となったのは、北部の首都ハノイで進んだハノイ・メトロ2A号線(通称:カットリン高架鉄道)の建設計画だ。全長13キロを全線高架とし、12の駅を設ける形で2021年に開業した。

ハノイ・メトロ2A号線
ハノイ・メトロ2A号線(写真=NKSTTSSHNVN/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

英建設業界専門メディアのグローバル・コンストラクション・レビューによると、工費は当初契約のほぼ1.6倍に膨れ上がった。元請けの中国国有企業・中国鉄路第六集団の責任であると、ベトナム当局によって公式に認定されている。

2012年、ベトナム運輸省は問題業者を名指しする年次報告、いわゆる「恥のリスト」の公表に踏み切った。以降も含め、リストは少なくとも3回にわたって公表された。問題ある業者として名指しされた中には、広西建工集団、中国路橋公司、中興通訊、中国鉄路第六集団など複数の中国企業が含まれていた。