中国規格で生じる問題点とは
現在、中国は資金提供に名乗りを上げておらず、対中国という意味では「債務の罠」の構図には至っていない。
一方で、技術の面では中国依存に傾きつつある。ベトナム国営ラジオ放送のボイス・オブ・ベトナムによると、トラン・ホン・ミン建設大臣は南北高速鉄道に2026年末までに着工するよう指示しており、仕様の策定が急がれる。
注目すべきは、これと隣接するラオカイ線だ。中国へ越境して走る在来線の主要路線であり、南北高速鉄道が完成すればハノイでの乗り換え先となる。
ラオカイ線では中国系の大手コントラクター(請負業者)が最終候補リストに名を連ねており、中国の技術基準を採用するコンサル契約もすでに結ばれた。
路線幅は在来線ながら1435mm標準軌(国際標準であり、中国高速鉄道や日本の新幹線とも一致)を採用しており、信号・車両・保守体系はすべて中国規格で建設される。
着工期限が迫る南北高速鉄道でも、同じく中国規格や中国系コントラクターが選ばれる公算が大きい。
南北高速鉄道をめぐっては一時期、日本有利と報じられていた。しかし現在、入札書類は中国規格を前提に整備が進む。
最終的な受注者の正式発表こそまだだが、20年間にわたる調査協力の末に、日本案が再び主導権を握る余地は限定的となっている。
「事故0件」で完成した日本主導路線
高速鉄道の建設を中国規格・中国事業者に委ねるにあたり、国民からは不安の声が上がる。日中の品質差は、既存の都市鉄道を比較すれば明らかだ。
日本がベトナムで手がけたホーチミン市のメトロ1号線は、たしかに問題点も多かったが、完成した今では好評を博している。
AFP通信によると、2012年に建設が始まったメトロ1号線は、当局から5年以内の開業を約束された。しかし、技術的問題やコロナ禍に見舞われ、完成までに12年を要した。費やした総額は17億ドル(約2700億円)にのぼる。当初見積もりの実に2.5倍以上だ。
ブイ・スアン・クオン副市長が「無数の障壁」を乗り越えたと語るように、たしかに日本が関与するプロジェクトが常に順風満帆というわけではない。
それでも、安全面では語るべき実績がある。サウスチャイナ・モーニングポストは、建設中に事故はただの1件も生じなかったと伝える。
プロジェクトには前述した日本勢のほか、フランス・イタリア・韓国の企業も参画している。

