なぜ日本のODAは嫌われたのか
ところが、ここに来てベトナム政府は、日本のODA(政府開発援助)を「制約」と捉え、20年にわたる貢献を切り捨てている。
ベトナム政府が打ち出したのは、自力調達優先の戦略だ。2026年末の着工・2035年開業を目指し、資金は国内調達を優先。外国からの借り入れは、制約の少ない好条件のものに限って検討するという。
インフラ事業の遅延を繰り返してきたベトナムにあって、10兆円を自力で賄おうという野心的な目標だ。
なぜ自力調達にこだわるのか。ベトナムのオンライン新聞「ベトナムネット」によると、グエン・ヴァン・タン交通運輸大臣は、ODAによる融資を受けた過去の都市鉄道の事業に言及。ODAの制限で業者選定の選択肢が狭まり、コスト増につながったと主張した。
こうした問題を避けるため、「今回は外国融資に縛られず、品質とコスト効率を重視した業者選定を行う」と強調している。
「日本に学べ」と言った大臣の翻意
排除された日本を、ベトナム政府は同時に「最良の手本」だとも称えている。手本と仰ぐ国を、入札から締め出す。高速鉄道構想の出発点に、解消されない矛盾が残る。
グエン・ヴァン・タン交通運輸大臣が国会で手本に挙げたのは、ほかならぬ日本の新幹線だった。
ベトナムネットが伝えた演説で同氏は、その仕組みを具体的に紹介してみせた。最高時速300キロで、主として旅客専用。貨物輸送は原則として担わず、在来線・沿岸海運・道路輸送に委ねる。
「50年前なら、鉄道が貨物輸送の30%を担っていた。だが、現在はわずか4〜5%だ」。旅客に特化したモデルの有効性を訴える根拠に、タン氏は日本の新幹線が半世紀かけて証明した実績をためらいなく引いた。
だが、そのわずか18カ月後。南北高速鉄道の採用案は、なし崩し的に中国へ傾いていった。
2024年6月、ファム・ミン・チン首相は中国・大連で開催された世界経済フォーラムで、中国鉄道信号情報公司の会長に対し、設計・建設・技術移転への支援を直接要請した。ブルームバーグが伝えている。
ベトナム国会で日本モデルを称えたタン交通運輸大臣も、同時期に南北高速鉄道への中国支援を求めた。

