早歩き、スキップで通っても問題なし

筆者は、顔認証の改札は初体験である。そもそも、本当に通れるのか。何もしないで改札を通るのは、謎の背徳感にかられ、ドキドキするものだ。

恐る恐る歩き出し、設置されたカメラに目線を合わせる。すると瞬時に筆者の顔を認識し「ピッ」という音がした。そしてゲートが閉まることなく、さっと通ることができた。「これはすごい」という驚きが1番に、「ほっ」という安心感が2番目にあった。

精度も良好だ。通常の歩行スピードはもちろん、やや早歩きでも問題がない。ラッシュ時のように、前の人と距離を詰めても大丈夫。「あまりに密着しすぎるとカメラに死角が生まれますが、1メートル弱ほど距離が空いていればスムーズに通過できます」と中桐さんは言う。

筆者は嬉しいことがあった日を想定し「ホホホ」とスキップしながら通ってみたが、無事にシステムは正確に反応した。

一言でいうと「楽ちんの極み」である。カードを取り出すのと取り出さないのには、大きな違いがある。両手に荷物を持っている人、あるいはベビーカーを押している人、杖を突いて歩く人など、メリットは計り知れない。

もはや「改札を通る」という意識そのものが消えた。物理的なデバイスに縛られてきた時代からの解放である。

ショッピングバッグを手に楽しそうに走る女性
写真=iStock.com/Piyaphorn Promnonsri
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現時点では「ICカード」が決済の主軸

現在の実証実験の登録数は約200名にのぼり、月に約1000件の利用があるという。

「通勤通学の方や、新技術に興味がある方にお試しいただいています。『ハンズフリーで通れるのがいい』という声が届いています。皆さんがこうした世界に慣れていけば、改札前での滞留もなくなるはずです」とのこと。

今後、改札機はどうなっていくのか。

「お客様の属性によって求められるサービスは異なります。定期利用者もいれば、インバウンドの方もいる。多様なニーズに最適解を提示することが重要です。また現在、世の中では交通系IC、クレジット、QRコードなどで乗れる鉄道路線が登場してきておりますが、選択肢を増やしすぎると逆に分かりづらくなってしまいます。

理想は一つの方式への集約ですが、現時点ではやはりICカードが決済の主軸と考えます。処理が圧倒的に早く、日本人の生活に深く根付いていますからね。

今回顔認証の実験をしていますが、この手法に固執しているわけではありません。今後も技術の発展に合わせ、柔軟に手段を検討し続けていきます」とのことだ。

改札の形は時代に合わせて変わる。今回の取材で肌で感じたことである。