「張りぼて」の間で揺れるゴンドラ
いま、アムール川の上空70メートル、ビルで言えば高さ20階分に相当する位置に、新たな道が架かろうとしている。ロシアと中国を結ぶ「世界初の越境ロープウェイ」だ。
ブラゴヴェシチェンスクから対岸の黒河まで、全長976メートル。年間最大250万人の利用を見込む。2015年の中ロ政府間協定に基づき建設が進められ、正式な運用開始は今年春以降の見通しだと、ロシア独立系通信社のインターファクスがロシア運輸省の発表として報じていた。ただし今年3月になって、寒波の影響による工事の遅れをロシア政府系全国紙のイズベスチヤが報じている。
かつて対岸を張りぼての「ポチョムキン村」と嘲った国が、歯を治しに川を渡り、スマートフォンを求めて国境を越えている。子供たちに中国語を学ばせ、交易商は収入を頼り、ドル決済網から切り離された通貨の安定までをも対岸に委ねるようになった。
橋ひとつ架けることを長く拒んできたその国が、いまは空中にロープウェイの回廊が架かるのを止めようとはしない。ポチョムキン村と嘲笑った「張りぼて」のフレーズは、はたしてどちらの岸を指していたのか。
順調に進めば、まもなくロープウェイのゴンドラがアムール川の上空を静かに行き交い始める。


