たしかに、要領よく生きるのがうまい人はいる。この人にあの人を紹介すれば自分にも恩恵がありそうだとか、ここで貸しをつくっておけばこちらの要望も聞いてもらえるといった計算をして、巧みに世の中を渡っていく種類の人たちだ。
これを賢い生き方だと考える人もいるだろう。
だが、こういったことは、しょせんは小手先の要領。とてつもない年収を稼ぐ人たちからは、このようなせこい世渡りは、すぐに見抜かれるものだ。
計算ということでは、私も大手損保に勤めていたほうが人生の計画は立てやすかった。20代の終わりには、すでに年収1000万円を超えており、ボーナスやら何やらで、生涯年収をざっと計算するだけで数億円にはなった。
退職金や企業年金も充実しているから、安穏な老後を送ることもできただろう。
しかし、果たしてこのような計算は正しいのか。
台風の一件では、私もさすがに懲りた。
人生は計算どおりにはいかない。それどころか、損得勘定にとらわれると、かえって運が逃げていく。それであれば、せこい計算をするより、すべてを受け入れる覚悟で、仕事の実績と経験を積もうと決めたのだ。
だが、そのおかげで、仕事を通じて自分を鍛えることができた。実績と経験を積むことで、ほかの人よりもさらに数字をあげることができるようにもなった。
この年度が終わった入社5年目の年、私は売上達成率と新規取引先開拓のポイントを足した総合売上で、初の全国1位を受賞した。
MVPにはいくつかの評価基準があり、それぞれの基準ごとに毎年10人ほどの受賞者がいる。実際、MVPだけであれば、私は毎年、受賞者に名前を連ねていた。だが、総合売上の大きい全国1位となると、そうはいかない。
そして、この年以降、損保、そのあとの生保時代を通じての14年間で、私は通算4回の全国1位を獲得することができたのだ。
【年収1億を生む黄金則】損得勘定にとらわれると、かえって運を逃すと心得る。
(※『プロフェッショナル ミリオネア』(プレジデント社刊)第5章「捨てる、決断する」より)