政治家たちが残した熱い「レガシー」
「お台場はまだ土地が余っているんですよ。都市部も近いし、こうした施設の建設にはとても適しています。ただ、まだ計画段階で、正式な決定は未定です。仮にこれが完成すると、人が大勢集まるだろうから、住民としては大歓迎とは言えませんけどね(笑)」(森さん)
また、森さんは「お台場は政治家のレガシー作りの場」になっているとも語る。
お台場を舞台にした政治家のレガシー作りで、まず思い浮かぶのが、2人の元東京都知事、鈴木俊一氏(79〜95年在任)と青島幸男氏(95〜99年在任)だ。
「お台場を含むこの地域には、1996年に世界都市博覧会(都市博)を誘致する計画がありました。誘致に積極的だったのが当時の都知事・鈴木さんで、逆に都市博反対を公約に都知事の座を射止めたのが青島幸男さんでした」(森さん)
つまり、鈴木氏は都市博を開催することでレガシーを残そうとし、逆に青島氏はこれを阻止したことでレガシーを作った。
また、青島氏に続く石原慎太郎元都知事(99〜2012年在任)は、実現はしなかったものの、お台場にカジノを誘致しようと奮闘した。
お台場は「失敗」ではなく「未完」の街
「そして、現在のレガシーがあれですよ」と、森さんはフジテレビの18階から、お台場海浜公園を見下ろした。小池百合子現都知事がゴリ押ししたといわれる「東京アクアシンフォニー」が、高々と水を吹き上げていた。横幅約250メートルの噴水施設で、世界最大級とされる。
今年3月28日の土曜日から運用が始まった。噴水は午前11時~21時まで計10回。最大150メートルまで水を吹き、日が暮れてからの噴水は様々な色にライトアップされる。
「総工費はなんと26億円以上ですよ」と、森さんは苦笑した。
今後、この噴水施設がどれだけ経済効果を生むのか定かではないが、お台場が政治家たちのレガシー作りの場になっている、という森さんの言葉は、つくづく達見だと感じた。
最後に森さんは外からは見えにくいお台場の暮らしについてこう語った。
「台場に暮らしてみて感じるのは、ここが“住めば都”という言葉の典型だということです。まず、街に電柱が一本もないので空が広く、海風が抜けるすっきりした景観が保たれている。可燃ごみは24時間いつでも管路に投入できるので、生活のストレスが驚くほど少ない。車道と歩道がきちんと分離されているから、子どもたちの通学も安心して見ていられます」
消えていった施設だけを見れば、お台場は移ろいやすい街に映る。だが、その変わり続ける落ち着かなさこそが、この街の本質なのかもしれない。お台場とは、完成を目指す街ではなく、未完成のまま更新され続ける東京そのものなのかもしれない。


